ウクライナ冬の旅(後編)
〜27年前の蒸気機関車撮影ツアーより

  • 2023/2/27

ロシア軍がウクライナに侵攻して 1年。
報道などでウクライナ各地の地名を耳にするたびに、
27年前の冬に見たウクライナの記憶がよみがえってきます。
参加したのは蒸気機関車の撮影ツアー、
1995年12月29日から1996年1月6日に催行されたものです。

ウクライナ冬の旅(前編)はこちらからご覧いただけます)

行く先々で出会うウクライナの人々は自然に囲まれた素朴な表情が印象的。 ©Koji Yoneya

モスクワからキーウまでは夜行列車での移動、夜が明けたら少女たちが通路で外を眺めていた。©Koji Yoneya

 移動はすべてツアー専用列車でしたから、人々の生活の場へ深く入り込むような旅ではありませんでしたが、〝ランパスト〟を繰り返すなかで、駅や沿線ではウクライナの人々に出会いました。欧州でも貧困国と言われるウクライナ。訪問時は記録的な大雪に見舞われ、雪景色のなかで人々の素朴な表情が印象的でした。

蒸気機関車撮影の合間に人々の生活を垣間見ることができた。©Koji Yoneya

愛犬の散歩にきた紳士。©Koji Yoneya

大雪のなか、親子で買い物に来たのだろうか?©Koji Yoneya

 27年前のツアーは、主にウクライナの南西部を巡る行程。西部のカルパチア山脈から南の黒海沿岸にかけては、ウクライナでも景色の美しい地域といわれ、ツアー先に選定されることが多かったようです。ツアーを運営する、旅行会社〝ゼレロ〟のパンフレットによれば、「ウクライナすべての地域を巡る」とありますが、この撮影ツアーでは、現在ロシアによる軍事侵攻が続いている東部やクリミア地方を訪ねることはありませんでした。

カルパチアのリゾート地ヤレムチャ。左は蒸気機関車撮影ツアー専用列車。 右は臨時列車で、列車から多くの人々が降りてきた。©Koji Yoneya

記録的な大雪に見舞われ、駅前の露店に並んだ商品も雪化粧。©Koji Yoneya

年代物のバスが乗客を待つ。©Koji Yoneya

一刻も早い戦争終結を願わずには居られない。©Koji Yoneya

 

 出口の見えない戦争が続くなか、被害はウクライナ全土へ及び、鉄道も攻撃対象とされ被害を受けています。ニューヨークタイムズ2022年11月15日付〝Ukraine’s 15,000-Mile LifeLine〟の記事によれば、東部では昨年4月に混み合うクラマトルスク駅にミサイルが着弾し60人が死亡、8月のウクライナ独立記念日にはチャプリネ駅がロケット弾の攻撃を受け25人が死亡しています。6月には前線から遠く離れたカルパチア山脈の線路もミサイル攻撃の対象になったといいます。キーウ経済大学は鉄道被害が2022年9月中旬までに43億ドルにのぼると試算。被害を受けるいっぽう、ウクライナ国営鉄道システム・ウクザリズニツィア(Ukrzaliznytsia)のスタッフが不休で働き、列車が多くの避難者を運び、また支援物資を輸送し活躍したと、詳細なレポートを寄せています。

 命を奪われた人々と残された家族、戦争の恐怖と向かい合わせで日々を送る人々、家族と別れ国外へ避難している人々の苦しみを思うと胸が痛みます。OHCHR(国連人権高等弁務官事務所)によれば、2023年2月15日時点で民間人の死者は8,000人を超え、負傷者は1万3,000人以上。また、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)によれば、近隣国へ逃れた難民は約800万人を数えるといいます。前線に立つ兵士の正確な死者数は明らかではないものの、両軍とも数万から十数万人近い犠牲者があるとも言われ、一刻も早くこの戦争が終結することを願って止みません。

 

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