強まる中国の影響力 新興国が選ぶのは連立か対立か
アジア経済の取り込み狙うチャイナマネー 南シナ海ではくすぶる火種
- 2024/7/23
国際社会で米国と対峙する大国となった中国は、グローバルサウスと呼ばれる新興国グループと急接近をはかっている。中国、ブラジル、ロシア、インド、南アフリカを軸とした経済協力の枠組みであるBRICSにはタイやマレーシアなどが次々と加盟を希望しており、中国はその求心力として影響力を一層強めつつある。しかし、その一方でフィリピンとは南シナ海をめぐる対立により緊張が高まるなど、新興国との関係性は必ずしも良好とは言えない状況だ。フィリピンとパキスタンの報道ぶりから考える。
「海賊」行為に憤るフィリピン紙
中国やフィリピンなどが領有権をめぐって対立する南シナ海で6月半ば、フィリピン軍の輸送船が中国海軍や海警局の船によって補給活動を妨害された。フィリピン側は、中国の攻撃的な行動により乗組員の軍人1人が大怪我をしたとして、「容認できない」と中国を強く非難している。
これを受け、フィリピンの英字紙デイリーインクワイアラーは、6月25日付で「南シナ海の海賊」という見出しの社説を掲載し,次のように述べた。
「事件から数時間が経ち、アユンギン礁での悲惨な補給作戦の全容が明らかになるにつれてフィリピン人は失望し、そして憤った。フィリピン軍が中国海警局から受けた打撃について詳細を発表するまでに数日を要したことは、あまりに残酷な仕打ちを受けたことを恥じている証である。それはもちろん、悪いことをしたという恥ずかしさでも、罪を犯したという後悔や後ろめたさでもなく、悪人のなすがままにされたという理不尽な罪悪感であり、無力な被害者であったことの恥辱である」
この、きわめて感情的な冒頭の記述を見るだけで、南シナ海での出来事がフィリピン国内でどう受け止められているかが推察される。
さらに社説は、自国の兵士が負傷した状況について、「中国側がつるはしやナイフなどの刃物を振り回し、催涙ガス、サイレン、目くらましのライトなどを用いてフィリピンの船に強引に乗り込んだため」などと記述している。これに関連し、フィリピン軍は、「彼ら(中国側)は海賊のようだった」と述べたという。
とはいえ、社説は「これはまだ武力行使と呼べるレベルには達していない」と主張するフィリピン政府の姿勢に一定の理解を示し、次のように述べる。
「フィリピン政府が、燃え上がった怒りの炎をしずめようとするのは理解できる。フィリピンが武力攻撃の標的になったと主張すれば、米国との相互防衛条約が発効することになるが、ワシントンとの条約発動にはまだ用意が十分とは言えないからだ」。
また、フィリピンのマルコス大統領も、今回の事態を受け、「マニラは戦争を煽るようなことはしない」と述べ、平和的解決を望む態度を明らかにしている。
中国経済への依存を深めるパキスタン紙
逆に、中国の存在が不可欠になりつつある国もある。パキスタンだ。6月23日付の地元英字紙ドーンには、中国との経済協力である「中国・パキスタン経済回廊(CPEC)」の停滞を危惧する社説が掲載された。
社説は、「中国は新たなCPEC計画の推進にあまり乗り気ではないようだ。その原因は、パキスタンにいる中国人と中国の資産が守られるかどうか懸念があるからだろう」として、中国がパキスタンの政情に警戒心を抱いているとの見方を示した。
パキスタンのシャリフ首相は6月初めに中国を訪問し、習近平国家主席と会談している。しかし、この会談について、社説は「首相は、公式声明では平静を装ってはいたが、実質的な成果はほとんどなかったようだ。一方で、安全保障に対する中国の懸念は明白になった」と分析する。実際、中国の習近平国家主席は、会談の中で「パキスタンが安全で安定した予測可能なビジネス環境を構築し、中国の人員とプロジェクトの安全を保障することへの期待」を表明したという。
「ビジネス環境と政治的安定に関する中国の懸念を払拭するためには、パキスタンは両分野で実績を上げるしかない。外国との約束を守ることを誓約し、政権が変わってもその約束を破らないようにしなければならない。パキスタンが中国の助言の大半に耳を傾けることこそが、パキスタンにとっての利益にほかならないのだから」
経済の立て直しにあたり、中国の力を必要としているパキスタンの危機感があらわになった社説だと言えよう。
(原文)
フィリピン:
https://opinion.inquirer.net/174671/pirates-of-the-south-china-sea
パキスタン:
https://www.dawn.com/news/1841398/chinas-concerns