【歩く・見る・撮る】― 写真民俗誌/民族誌へのいざない ―
ミャンマー(ビルマ)から ㉒<里程標>

  • 2024/5/11

ミャンマーで国軍が与党・国民民主同盟(NLD)を率いるアウンサンスーチー氏らを拘束し、「軍が国家の全権を掌握した」と宣言してから3年以上が経過しました。この間、クーデターの動きを予測できなかった反省から、30年にわたり撮りためてきた約17万枚の写真と向き合い、「見えていなかったもの」や外国人取材者としての役割を自問し続けたフォトジャーナリストの宇田有三さんが、記録された人々の営みや街の姿からミャンマーの社会を思考する新たな挑戦を始めました。時空間を超えて歴史をひも解く連載の第22話です。

 ㉒<里程標> 

 ビルマ( ミャンマー)でバイクを⾛らせていると、路傍にある⾥程標をよく⾒かける。ふと、そこに記されている地域名や数字にはいくつかのパターンがあることに気がついた。
 ちなみに、外国に⾏って、ある程度⾃由に動こうと思えば、まず、「こんにちは、ありがとう、どうぞ」といった現地の挨拶を覚えることが、第⼀歩であろう。その次に覚えるのは、数を数える時の読み方や発⾳の仕方、書き方であろうか。市場でモノを買う時、値段の確認や交渉に欠かせないからだ。また、時間を訊ねるためにも、数字を理解しておくことは必要だろう。
 実際、他の国と同じように、ビルマ( ミャンマー) にも独⾃の数字の表記と読み⽅( 発⾳) がある。アラビア数字も普及しているため、単なる旅⾏だけであればそれほど困ることはないのだが、少しでも奥深いビルマを知ろうとするなら、ビルマ数字の読み⽅と発⾳はひと通り学んでおいて損はない。

 今回は、ヤンゴン市やマンダレー市という⼤都市からも、バガンやインレー湖といった観光地からも離れ、地方都市に目を向けて、各地の⾥程標や案内板の表記を通じてビルマ( ミャンマー) 社会の変化を考えてみたい。
 なお、ミャンマー(ビルマ)は現在、公式にはまだメートル法を採⽤していない国の⼀つである。2011 年にテインセイン政権が発⾜した当時、従来の英国式マイル法から脱却しようという法改正の動きがあったものの、今なお実現していない。ちなみに、世界で今、公式に(法律的に) メートル法を採⽤してない国は、⽶国、リベリア、そしてミャンマー(ビルマ) の3カ国だとされている。このうち、1847年に独⽴したリベリアは、旧宗主国である⽶国の法体系を踏襲しているため、実質的には、⽶国とミャンマー(ビルマ) の2カ国がメートル法を採用していない特異な存在だと言えよう。

※ なお、里程標の表記パターンは、以下のように整理できる。
  地名:(1)英語表記か、(2)ビルマ語表記か
  距離:(3)アラビア数字か、(4)ビルマ数字か
  単位:(5)マイル表⽰か、(6)キロメートル表⽰か
  また、実際には、これら(1)(2)(3)(4)(5)(6)が混在して表記されているため、⾮常に分かりにくくなっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

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