新型コロナウイルス 見えざるスーパーヒーローたちに微笑みを
マレーシアの英字紙が思いやりと感謝を呼び掛け
- 2020/5/2
新型コロナウイルスの感染で、最前線に立つ医療従事者に感謝を示そうという動きは世界各地で広がっている。急激な感染者増で医療崩壊を招いている国もあり、日本でも医療態勢を守ることは喫緊の課題となっている。4月19日付のマレーシアの英字紙ザ・スターは、少し違う角度から、新型コロナウイルスとのたたかいの英雄たちをとりあげている。「英雄は医療関係者だけではない」という社説だ。
マレーシアは、東南アジア諸国でも感染者が多い国で、4月30日時点での感染者数は5,945人に上る。そのうち4,087人が回復し、100人が死亡した。政府は3月18日から5月12日まで、全土に活動制限令を発令し、州をまたぐ移動を許可制にするなどの対策をとっている。また、必要不可欠なサービスの営業や食料品の調達など以外、国民の外出が禁止されている。
こうしたなかで社説は、自分たちの命と暮らしの安全を支えているのは、医療従事者だけではない、と指摘している。
「すべてのスーパーヒーローが防護服を着ているわけではない。彼らのすべてが手術着を着ているわけではない。命を懸けて治療にあたる最前線の医療従事者に感謝の意を示すのは当然のことだが、私たちが自宅にいて、感染拡大予防に努める間に、必要不可欠なサービスを支えてくれる人たちはほかにもいる」
こんな書き出しで始まる社説が「ほんの一例」として挙げたスーパーヒーローたちは、次のような人たちだ。食事のデリバリーを担う人たち、スーパーマーケットの人たち、レストランの料理人たち、警備員たち、清掃担当者たち、ごみ収集を担う人たちなど。
「私たちの家に食事を運んできてくれる人たちは、新しいバットマンだ。オフィスを清掃してくれる人たちは、新しいワンダーウーマンだ。ゴミを集めてくれる人たちは、新しいスーパーマンだ。彼らは、医師や看護師や警察官や消防士のようにパンデミックの最前線にいる人たちに比べて、見えにくい。けれど、新型コロナウイルスという目に見えない敵にさらされながら、任務を果たそうとしてくれていることに、変わりはない」
社説は、こうした「見えざるスーパーヒーローたち」に気づいているだろうか、という。「私たちは、彼らに人としての思いやりを持ち、彼らの仕事が感謝されているのだということを伝えるべきだ。少なくとも、彼らを見たら微笑みや親指を立てて、彼らが素晴らしい仕事をしてくれているのだ、ということを伝えなくてはならない。すべてのマレーシア人にかわって、私たちは彼らに敬意を示したい」
「論」ではないが、思いやりにあふれた美しい言葉が並んだ。一人ひとりがさまざまな我慢を強いられ、苦境に陥る人もいるなかで、どれだけ他者を思いやることができるか。コロナ禍には、人間の心までもが試されている。
(原文:https://www.thestar.com.my/opinion/columnists/the-star-says/2020/04/19/non-medical-frontliners-are-heroes-too/)