「クーデターから1年を迎えたヤンゴン」
2月1日、サイレントストライキで再び沈黙の街へ

  • 2022/2/6

【編集部注:】

クーデターの発生から2月1日で丸1年が経ったミャンマー。最大都市ヤンゴンでは、多くの店が軍からの命令で強制的に営業させられたものの、客の姿はなく、軍歌が街に流れていたようです。当日のヤンゴンの様子を伝えるnoteの投稿を紹介しました。

クーデターから1年の2022年2月1日。サイレントデモが行われたヤンゴンの街を走る警察車両(筆者撮影)

~ 以下、noteの投稿より ~

 2021年2月1日の早朝、徹夜明けの私は軍がクーデターを起こしたことを知った。それからちょうど1年後の2022年2月1日、9時ちょうどに目覚まし時計で目覚めた。

 その日は、午前10時から午後4時までサイレントストライキ(沈黙のストライキ)が予定されていた。昨年12月10日に行われたサイレントストライキで最大都市ヤンゴンのダウンタウンを歩いて回った時は、どこもゴーストタウンになっていたが、今回はどうだろうか。様子を見るために、ストライキが始まった10時過ぎに出かけることにした。

役所から届いた書類

 まず、近くの小さなゼー(市場)に向かった。8割ほどの店が開いていたが、客の姿はまったくなく、店主たちが暇をもてあますように集まって話をしていた。顔なじみの店主に「今日は店を開けたんだね」と声をかけると、彼は苦笑しながら「しょうがないよ。こんなのが回ってきたんだ」と、1枚の紙を見せてくれた。

 役所から来たというA4サイズの紙には、「NUGやCRPH、その他のテロリスト集団が行おうとしているサイレントストライキに参加してはならない。もし参加した場合は、法に基づいて起訴され、動産、不動産を没収されることもある」と書かれていた。実際、数日前から何人もの商店主が逮捕されていた。多くは、Facebookなどに「2月1日は店を休む」などと書き込んだ人たちだ。こうした状況から、人々は急きょ、今回のサイレントストライキでは「商店は店を開けるが、人々は家から出ない」と、やり方を変えた。

客が消えた店
 ゼーを後にし、最寄りのショッピングモールへ向かった。モールの前に警察の車が止まり、数人の警官の姿があった。中はほぼすべての店が開いていたが、客はほとんどおらず、店員が暇そうにスマホをいじっていた。

 近くの繁華街も、大通り沿いでは店が8割がた開いていた。しかし、ショッピングモールと同様に、店員はいても客の姿はまったくなく、いるのは店主と店員ばかりという奇妙な光景だった。

 昨年12月10日に行われたサイレントストライキでは、交通量が普段の100分の1ほどに減り、ヤンゴン全体がゴーストタウンのようだった。それに比べれば、この日の交通量は普段の10分の1程度というところだろうか。もし、店を強制的に営業させていなかったら、前回と同様にゴーストタウンになっていたのではないかと思う。

厳重な警戒がしかれたヤンゴンの街
 ダウンタウンの中心部、スーレーパゴダに向かった。途中の市場では、銃を抱え、うつろな目をした兵士たち数人が2メートル幅の狭い通路の両側に向かい合って座っていた。一瞬、迂回しようかとも思ったが、避けるような行動をすれば逆に疑われると思い、そのまま直進した。銃を持った兵士の間を通る時は、さすがに緊張した。

 軍や警察の車両にも何度か遭遇した。ヤンゴンではここ2〜3カ月ほど、表面上、軍を見かけることは減っていた。PDFや民族軍と戦うために、多くの兵士がヤンゴンから地方へ移動したという話も聞いていた。しかしこの日は、どこにこんなに残っていたのかと思うほど多くの兵士を目にした。

 スーレーパゴダに到着した。近くにかかる歩道橋は絶好の撮影ポイントで、昨年12月のサイレントストライキの日もその上から撮影したため、この日もそうしたかったのだが、歩道橋の上には銃を持った警察官が数人立っており、警戒している様子がうかがえた。また、軍人や警察官が私服姿で紛れ込んでいるという話もよく耳にするため、周囲に気を配りながらこっそり写真を撮るしかできない。それも、一覧レフなどの大きなカメラは持っているだけで逮捕されるため、スマホが頼りだ。

スーレーパゴダに響く軍歌
 軍歌が聞こえてきた。スーレーパゴダの横にある公園の前に軍車両や拡声器を積んだトラックが止められ、軍歌はこの拡声器から流れていた。歌詞はビルマ語だが、メロディーは旧日本軍の軍歌のようだった。ミャンマー軍の軍歌には日本の軍歌がいくつか採用されていることはよく知られている。中でも、「軍艦マーチ」は有名だ。もっとも、この時流れていたのが日本の軍歌だったかどうかは、私には分からなかった。周囲には、一般市民の格好をした人々も20〜30人ほどいた。

 この日は、ここスーレーパゴダからタマダ映画館の前まで、軍のサポーターたちによるデモが予定されていたため、始まるのをしばらく待っていたが、そのうち拡声器を積んだトラックが発車し、軍歌を流しながら北の方へと走っていった。その様子は、まるで日本の右翼の街宣車のようだった。結局、私がその場を離れた12時過ぎに、軍を支持するデモが始まったと聞いた。参加者は100〜200人ぐらいいたようだ。

 軍にとってはクーデター1周年の記念日となった2月1日。この日にサイレントストライキを行うことなど、軍からすればとうてい許されることではなく、全力で阻止しようとした。しかし、できたのは店を強制的に営業させることと、軍歌を流すことだけだった。

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