「ミャンマーの5400万人に代わって世界中の一人一人が」
「あなた方の持っている自由を、持たない人のために用いてください」
- 2021/4/3
【編集部注:】
軍の弾圧が強まるミャンマーで、人々のインターネットへのアクセスもどんどん制限されています。ここでは、情報源が断たれる恐怖と闘いながら現地の様子を伝えるfacebook投稿をご紹介します。
~ 以下、Facebook投稿より ~

フラワーデモの日。 帰り道のバス停のベンチにも、バラの花が並んでいた。 抗議活動で命を失った人たちへの追悼の言葉とともに「ミャンマーが、平和と正義とともにふたたび花開きますように」という祈りのメッセージが書かれていた(筆者撮影)
「あなた方のフィードから、ミャンマーはゆっくりと消えていきます。
インターネットの完全遮断は時間の問題でしょう・・・。
どうか、ミャンマーのために声を上げることを、やめないでください」
(Nikkei Asia 英文記事 t.ly/wfbT より)
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1日8時間のインターネット遮断が始まって、約50日。
モバイルインターネットが使えなくなって、約20日。
もう十分に不便なのだけれど
昨日からさらに、一部のWi-fiが遮断された。
ミャンマー人スタッフは
「先週やっとの思いでポータブルWi-fiを手に入れたのに、むだになってしまった」と肩を落とした。
ヤンゴンでは入手できず、地方にいる親戚から送ってもらったのだという。
値段は、普段の2倍したそうだ。
私にとっても他人事ではなかった。
うちのWi-fiは大丈夫だろうか?
Wi-fiが遮断されれば、情報にアクセスする手段はなくなってしまう。
新聞もテレビも、もはや国軍を賛美するニュースしかなくなってしまい
まともな報道は、今やインターネットでしか見れないのだ。
何の情報もなければ、家の外に出るのもこわい。
街が今どんな状態なのか、今日は近所で武力弾圧が行われていないか、どうやって知ればいいのだ。
ミャンマー人の同僚に、インターネットがない人たちはどうやって情報を得ているのかと聞くと、口々にこんな答えが返ってきた。
「電話で連絡し合ってるんだよ。
たとえば私の家にはWi-fiがあるから、ネットがない友達がみんな電話してくるの。
毎晩、今日はどんなことがあったか、まとめてシェアしてる」
「遮断される前に、Facebookで呼びかけてる人もいるよ。
自分のWi-fiは遮断されないタイプのものだから、
情報がほしい人は今のうちにコメント欄に電話番号を書いて。
毎晩ショートメッセージで情報を送るよ、って。」
こういう、表面上は見えない助け合いが、
抵抗を続ける市民を支える「草の根」になって、地中でネットワークを形成している。
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かつての軍政を知らない私は、
クーデターが起きて以来、周囲のミャンマー人たちに
「軍政のとき、何が一番いやだった?」と質問してきた。
答えは、だいたい3つくらいに絞られるが、中でも多いのは「情報統制」だ。
「テレビも新聞も、フェイクニュースしかなかった」
「僕たちは21世紀になっても、白黒テレビで国軍放送を見ていたんだ」
「10年前に民主化するまで、インターネットなんて目にしたこともなかった。
携帯のSIMカードさえ、1枚1000ドル(11万円)以上したんだよ」
日本人の政府関係者は、あるセミナーでこう話していた。
「軍政期は、インターネットを引くのに(情報省の)大臣にまで書類を提出しなければいけなかった。それでも許可がおりるまで1年かかった」
31才の友人が話してくれたことが、私にとっては最も衝撃的だった。
「軍政下で唯一信じられる情報は、海外のラジオ番組だった。
大学生の頃、僕らはこっそりラジオでVoA Burmeseを聞いて、
なんとか世界を知ろうとしてたんだ」
ミャンマーで『インターネットが遮断される』というのはこういう意味なのだ。
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ちなみに私の場合、自宅のインターネットはかろうじて生きていた。
はぁ、よかった、と胸をなでおろす。
だけど、明日はわからない。
いつか、それも近い将来に
すべてが遮断されて、何もわからなくなるかもしれない。
ミャンマーからの声も、届かなくなってしまうかもしれない。
そのときはミャンマーの5400万人に代わって、
世界中の一人一人が声をあげてほしいと、切実に願う。
アウンサンスーチー氏は、かつての軍政下で
世界の人々にこんな風に呼びかけた。
「あなた方の持っている自由を、持たない人のために用いてください」