パキスタンの社説がインドのコロナ対策を批判
ワクチン開発国が世界最多の感染者数に苦しむ矛盾、その教訓は

  • 2021/5/1

 インドで新型コロナウイルスが猛威をふるっている。4月25日には24時間あたりの新規感染者が34万人を超え、世界最多を記録した。4月25日付のパキスタンの英字紙ドーンは社説でこの問題を採り上げた。

パキスタンが隣国インドにおける新型コロナの感染拡大に危機感を示している (c) Bhumika Singh / Unsplash

救われたはずの命

 「インドは今、新型コロナのすさまじい悪夢の中にいて、国民は考えられないような苦しみを味わっている」
 この日の社説は、冒頭で激しい言葉をいくつも重ねてインドの新型コロナ感染状況を表現した。インドは今年のはじめに1日あたりの新規感染者数が全国で1万人前後まで落ち着いたため、コロナウイルスへの勝利を宣言し、政治集会や宗教行事の開催を許可した。しかし、インドは現在、新規感染者数が連日30万人以上に上り、死者数は19万人を超えている。いまや、インドは再び世界最悪の感染状況に直面する国に逆戻りしてしまった。
 「切迫した状況を伝える話が国境を超えて次々と伝わってくる。病室で酸素が足りないと訴える声が上がり、緊急治療室の外には医師にすがりつき治療を懇願する患者たちがいる。また、その隣で別の患者が息を引き取り、遺体は駐車場につくられた急ごしらえの施設で火葬される。各病院の患者数は受け入れ可能な人数をとっくに上回っているうえ、国内の医師も疲弊しきっており、医療崩壊が起きて適切な治療が行えないため、日に数千人単位で患者が死に向かっている。彼らの多くは、インド政府のリーダーシップが欠如してさえいなければ救われたはずの命だ」

リーダーシップの欠如

 では、なぜ再び感染爆発が起きたのか。社説はその原因について「新型コロナを封じ込めることに成功したという誤った認識に基づく自己満足」と「科学技術とデータの無視」を挙げる。実際、インドで感染力の強い変異株が発見されたと報告された際も、モディ政権は自己満足の姿勢を変えず、国民のワクチン接種を急ぐどころか、国外にワクチンを輸出し続けたという。「その結果、世界有数のワクチン開発国の人々が、日に数千人単位で命を落としている」。
 そのうえで社説は、インド政府が宗教行事や政治集会の開催を認めたことも批判し、次のように述べる。
 「インドの指導者たちの責任は犯罪級だ。彼らはヒンズー教の巡礼者がガンジス川で沐浴する世界最大級の宗教行事と言われるクンブメーラの祭典に参加するよう支持者に促した。また、ウッタラカンド州では、神への信仰心によってウイルスに打ち勝つことができると発言した政府高官もいるという。政治集会すら、ようやく中止が宣言されたのは、つい数日前のことだ」
 パキスタンでも新型コロナウイルスの感染状況は悪化しており、首都イスラマバードの医療は崩壊寸前だ。社説も「パキスタン政府は、まるで夢遊病者がふらふらと危険に吸い寄せられるように、インドと同じ悲惨な道をたどろうとしているようだ」と、指摘する。「システムが崩壊してから都市封鎖すればよいというパキスタン政府の戦略のなさにぞっとする。一日も早くこうした認識を改め、迅速に対応しなければ、パキスタン全土はこれから数週間のうちに耐え切れない痛みと苦しみに見舞われるだろう」
 世界最大のワクチン生産国であるインドが、世界で最も多くの感染者を抱えているという矛盾した事実には、隣接するパキスタンのみならず、世界中の為政者と国民にとって学ぶべきことがあるはずだ。

 

(原文:https://www.dawn.com/news/1620223/indias-covid-disaster)

関連記事

ランキング

  1.  米連邦最高裁判所は6月24日、「人工妊娠中絶は憲法で保障された権利である」と認定した1973年の「…
  2.  中国は4月19日、南太平洋のソロモン諸島と安全保障協定を締結し、中国共産党の習近平・中央軍事委員会…
  3.  国際社会における安全保障の枠組みが大きく変わってきた。この夏は、特に南太平洋が熱い。米国は、軍事プ…

ピックアップ記事

  1.  米連邦最高裁判所は6月24日、「人工妊娠中絶は憲法で保障された権利である」と認定した1973年の「…
  2.  中国は4月19日、南太平洋のソロモン諸島と安全保障協定を締結し、中国共産党の習近平・中央軍事委員会…
  3.  国際社会における安全保障の枠組みが大きく変わってきた。この夏は、特に南太平洋が熱い。米国は、軍事プ…
ページ上部へ戻る