終盤を迎えたインド総選挙 「女性票」への注目も
「世界最大の民主主義国」の行方を握る有権者たち
- 2024/6/4
インドで1カ月以上にわたり続いてきた総選挙が、いよいよ終盤を迎え、投票日が目前となっている。3期目を目指すモディ首相が率いる与党・インド人民党と、最大野党である国民会議派を中心とした野党連合が、543議席を争う構図だ。世界最大の人口を誇るインドでの総選挙は、4月19日から6月1日まで7回に分けて投票が行われた。開票は6月4日に一斉に実施される予定だ。
酷暑に耐えた有権者が支える民主主義
インドの英字メディア、タイムズ・オブ・インディア紙は、首都ニューデリーなどで6回目の投票が行われた5月25日付の社説で「感謝の投票、猛暑に立ち向かった数百万人の有権者に祝福を」と題した社説を掲載した。
今回の総選挙では、選挙情勢もさることながら、その「暑さ」が注目を集めた。気候変動によって引き起こされた灼熱の気温が有権者の投票意欲を奪うのではないかと懸念されていた。
社説は、「北インドの人々はヘアドライヤーの中で生活しているようなものだ。他の地域の人々も、暑さと湿度にすっかり疲弊している。しかし、この暑さにもかかわらず、選挙期間中には何億人もの有権者が投票所に足を運んだのだ」と、酷暑の中、投票に出かけた有権者を讃えた。
さらに社説は、投票と民主主義についてこう説く。「投票とは、誰もが平等に、非常に重要な議論に参加できる唯一の手段だ。例えば、自分たちの国土や河川、都市に何が起きるのか、私たちがどんな医療や教育を受け、何によって刑務所に送られるのか、そして一人一人のアイデンティティは尊重されるのか、といった極めて大事な問題についての議論だ。」
また、民主主義の本質を社説は端的にこう表現する。「民主主義は、私たち共通の運命を決定する」。そして、「猛暑にひるむことなく投票所に向かった何百万人もの有権者たちが、民主主義に意味を与えたのだ」と、その行動の意義を改めて評価した。
民主主義の定義や本質を論じるこのような記述は、選挙という機会でなければ、普段、なかなか目にすることはない。かつて教科書で一度は知識として学んだことかもしれないが、今、大人になって現実社会に向き合った時、民主主義について正面から論じるこれらの言葉の持つ意味と重さが改めて認識されるのではないか。
女性票が握る選挙の行方
一方、今回の選挙では「女性票」の行方も注目されている。タイの英字紙バンコクポストに5月25日付で掲載された、インド人ジャーナリスト、サンジュクタ・シャルマ氏による解説記事「インド人女性は投票に何を求めているのか」を紹介したい。
同氏の記事によれば、「いくつかの州では、女性による投票率が男性を上回っている」という。女性票の増加は、選挙結果にどのように影響するのだろうか。
モディ政権のインド社会において、女性たちは「抑圧されている」と記事は指摘し、そう主張する根拠として「2021年の国際労働機関のデータによると、インドの労働人口に占める女性の割合はわずか19%で、1990年代初頭の40%以上から後退している」と述べる。また、「この国には強力な女性リーダーの伝統があるにもかかわらず、今年の選挙候補者を見てみると、女性候補者はわずか12%にとどまっている」とも指摘する。
女性に対する性暴力も、女性たちが改善を求める争点の一つだという。インドの国家犯罪記録局によると、2021年には1日あたり平均して86人の女性が強姦されたという。さらに、人口10万人当たりの女性に対する犯罪件数も、2014年から2022年の間に、56.3件から66.4件に増加していると報告されている。
記事は、「モディ氏の率いる与党が女性の置かれた現状に誠実に目を向けているとは思えない」とも指摘している。そのことが得票にどう反映されるのか、注目したい。
(原文)
インド:
タイ:
https://www.bangkokpost.com/opinion/opinion/2799065/what-do-indian-women-want-from-poll-