マレーシア政府が活動制限を条件付きで緩和
第二波を警戒する地元紙は「森を抜けていない」と呼びかけ

  • 2020/5/25

マレーシアは、3月18日から6月9日まで、全土で活動制限令が発令されている。5月22日現在の感染者数は7,059人、そのうち亡くなった人は114人。それでもマレーシア政府は感染拡大は抑制傾向にあるとして、5月に入ってから活動制限を条件付きで緩和している。5月17日付けの英字紙ザ・スターでは、コロナとの闘いの「これから」を考察している。

「感染の第二波を防ぐためには、ソーシャルディスタンスを保ち、人混みを避けてマスクをするといった努力を続けるしかない」と社説は指摘する (c) unitednations

まだ「勝利ではない」

 社説によれば、この日までに多くの業種において、感染予防策が取られた上で経済活動が再開されているという。その一方で、映画館やカラオケ、テーマパークや博物館、セミナーホールなど多くの人が一度に集まる場所や、床屋や美容室、ジム、スパ、サウナ、プールなど濃厚接触をする可能性が高い場所は、今も閉鎖されている。

 「私たちは、まだ森を抜けていない」。社説は、現状をこのように表現した。「経済活動を再開し、人々が州内であれば比較的自由に移動することができるようになったことは喜ばしいが、それはマレーシアが新型コロナウイルスに勝利したことを意味するものではない」

 さらに、直近で活動制限が強化された地区の例を挙げながら、「活動制限令が緩和されたからといって、なんでも元のようにしていいということではない。以前のように、社会的距離を保ち、マスクを着用し、周りの人の健康に気遣うことが重要だ」と、指摘する。「今、気を緩めたら、60日に及ぶ私たちの努力は水の泡と消える」という考え方は、5月25日に緊急事態宣言が全面解除された日本でもまったく同じように繰り返されていることだ。新型コロナウイルスの問題が、世界共通の「人類への課題」であることを改めて痛感する。

感染第二波の阻止を

 社説は、マレーシアが当初予測されたよりも新型コロナウイルスの感染拡大をうまく抑制できた、と評価する。当初は感染が爆発的に拡大し、医療崩壊を招くとさえ予測されていたようだ。そうした事態を避けられた理由として、社説は「年齢や人種や宗教やイデオロギーにかかわらず、私たち一人ひとりが努力した賜物だ」と、指摘する。その結果、「国民の90%しか活動制限令に従っていなかった」にも関わらず、予想より早く感染拡大を抑制することできたのだという。

 その一方で、警戒されているのが感染拡大の第二波だ。マレーシアでは、6月中旬に感染第二波が起きるのではないかとみられている。「経済活動が再び制限されるようなことがあれば、経済も暮らしも成り立たなくなるかもしれない」。

 その上で社説は、「第二波を防ぐためには、これまでの感染予防の対策を根気よく続けるしかない」と述べ、「社会的距離を保ち、他者とは少なくとも1メートル離れ、手を洗い、マスクを着けて人込みは避ける――これを繰り返すしかない」との見方を示す。

 「第二波を避けるのは、私たちみんなの責任だ。社会的距離を保つことは、愛する人々や友人たちを守ることなのだ」。ワクチンや治療薬が安定してすべての人の手に渡るまで、マレーシアの人たちだけでなく、世界中がまだ「森」の中にいる。

(原文:https://www.thestar.com.my/news/nation/2020/05/17/its-our-duty-to-prevent-a-second-wave)

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