ポストコロナの経済再建に苦戦するアジア諸国
「コロナ禍で顕在化した国内問題に取り組む時がきた」

  • 2023/4/19

 新型コロナ感染症の流行にもようやく収束の兆しが見え始め、各国では、大打撃を受けた産業セクターを中心に、ポストコロナの経済再建に乗り出している。 しかし、コロナ禍で顕在化した課題の多くは、コロナ流行以前からそれぞれの社会に根深く存在していたものでもあり、経済回復は必ずしも順調には進んでいないようだ。

(c)ロンラック/ペクセルズ

タイの若者のニート化が止まらない

 タイの英字紙バンコクポストは3月26日付紙面で「若い労働者たちに支援を」と題した社説を掲載し、いわゆる「ニート」の問題を採り上げた。 ニートとは、就学・就労していない、また職業訓練も受けていない若者を意味する言葉である。

 社説は国家統計局のデータを引用し、タイ国内の15歳から24歳の若者のうち、15%にあたる150万人が「ニート」である、と述べる。 さらに、タイ全体の「働いている人の数」が、2011年から2021年までの10年間で、約480万人から370万人に減少したことにも触れ、この減少の背景にあるのが「若者のニート化」だと指摘した。

 また、チュラロンコン大学がユニセフの協力で実施した調査によると、学校をドロップアウトした人の約7割が、その後、再び教育を受けることに関心がないと答えたという。 社説は、「若者のニート化が続けば、急速な高齢化とあいまって、タイの未来に大きな不安をもたらす」と指摘する。 例えば、タイ国内の外国企業の場合は、若い人材がより多いベトナムやカンボジアへ移転してしまうかもしれない。 また、ポストコロナで活況が期待される観光業では、すでに人手が足りていないにも関わらず、適切な人材が見つけられない状況に陥るだろう。

 社説はこうした状況に対し、解決策を提示する。 例えば、ニートの若者たちが職業訓練校などへ通うことができるように、公的な経済的支援をすることや、企業が若者を雇いたくなるようなインセンティブを設けること。 そして、「働くことそのもの」に興味がない若者には、自身が持つ可能性について認識させるアプローチが必要だ、とも主張する。 社説は、「ニートの存在は、そうした機会が欠如していたことを示すものだと言える」と述べ、対策の必要性を訴えている。

観光客が戻らず苦悩するネパール

 ネパールの英字紙カトマンドゥポストは、3月22日付紙面で「観光客はどこに行ったのか」と題した社説を掲載した。

 トレッキングや登山シーズンとなる春は、観光立国のネパールにとって重要な季節だ。 しかも、今年はようやくコロナ禍を脱したのだ。 観光業界の期待は高まっていた。

 しかし、社説によると、国内ホテルの予約状況は芳しくないという。 全国約2,000軒のホテルが加盟するネパールホテル協会によれば、「全客室の4分の1が空室」だという。 事実、2022年度に同国を訪れた観光客は約55万人で、コロナ禍前の約半分にとどまっている。

 観光客数が回復しない理由として、社説は、ネパール国内の政情不安や汚職、飛行機事故、プロモーション不足などを挙げる。 特に1月15日に起きたイエティ航空機着陸失敗事故は、71人が死亡し、1人が行方不明となる大惨事であり、社説は「ポカラのホテルの8割がキャンセルされた」との見方を示す。

 さらに社説は、観光セクターのプロモーションを「いい加減で不十分だ」と手厳しく批判し、「新たな観光地を開拓する必要がある」と主張した。 そして、「国際便の運航を増やし、インフラを整備し、官民の連携を深めることが重要」だと述べ、観光業の復活へ向け包括的な取り組みが必要であることを強調した。

 

(オリジナル)

タイ:https://www.bangkokpost.com/opinion/opinion/2536154/young-workers-need-help

ネパール:https://kathmandupost.com/editorial/2023/03/22/where-are-they-1679448082

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