コロナ禍を機に結婚と離婚について考える
マレーシアの社説が家族制度について提言
- 2021/9/14
近年、国際的に離婚が増加しつつある。新型コロナの感染拡大による生活の変化が、その傾向を後押ししたという。マレーシアの英字紙ニューストレーツタイムズは、8月30日付の社説でこの問題を採り上げた。
増える離婚
社説は2020年12月の英BBC放送の報道から、専門家のこんな見解を引用した。
「離婚率は、世界的に増えている。新型コロナの感染拡大をきっかけとする離婚は、今後もまだ増えるかもしれない」
この傾向は、マレーシアにも当てはまるという。
「シャリア法廷によれば、昨年1月から今年6月までの間に7万1806件のムスリム夫婦の離婚があったという。日に132組が離婚している計算だ」
社説によれば、離婚理由として挙げられるのが、失業や倒産などによる経済的なストレスだという。
「新型コロナの感染拡大によって、われわれの社会的な行動や生活に変化が生まれた。移動規制やステイホームによって、多くの家族や夫婦の関係性が変化した。家族は近づいたが、“近ければ近いほど嫌いになる”ということが、現実に起きやすくなっているのだ」
心理学者によれば、これは世界共通の傾向だという。しかし、離婚の増加を新型コロナの感染拡大だけのせいにしていいのだろうか。社説は、「コロナ禍は問題の一部でしかない。コロナ以前にもすでに問題はあり、パンデミックがそれを加速しただけだ」と、指摘する。
結婚という制度
マレーシアにおいても、離婚そのものはすでにタブーではないという。社説も「夫婦の45%が離婚する」という書籍を引用している。マレーシアの若者の中には、不幸な結び付きを解消する最適な方法は離婚だと考えている人も少なくないという。
とはいえ、社説は「うまくいかなければ離婚すればいい」という、結婚への安易な姿勢が広まることを懸念し、次のように述べる。
「離婚が当たり前になることは、悪いことばかりではない。しかし、心理学者による長年の研究によれば、離婚を経験した家族、特に子どもには、どんなに平穏な離婚であったとしても、なんらかの影響があるという」
そのうえで社説は、離婚の増加傾向に歯止めをかけるために「よく考えて行動を」と呼びかける。
「まずは、結婚前によく考えること。宗教的、あるいは社会的な観点から“良い結婚とは”と考えることは重要だ。地域の宗教指導者であるイマムやカウンセラー、心理学者などにカップルで相談することも有効だろう」
結婚とはそもそも何なのか、その原点を社会的あるいは宗教的に知ることから始めよう、という呼びかけのようだ。
「結婚という制度を尊重しよう。それは家族を結び付ける力になる」「結婚は社会の単位となる家族を作る礎だ」と、社説は訴えている。
(原文https://www.nst.com.my/opinion/leaders/2021/08/722493/nst-leader-respect-institution-marriage)