マレーシアで横行する「腐ったリンゴ」
前科者を要職に登用していた人事院に高まる非難
- 2020/12/22
マレーシアで過去に違法入国や違法薬物に関係していた警察官や入国管理局職員が、犯罪歴があるにも関わらず採用されていたことが相次いで明らかになった。12月6日付のマレーシアの英字紙ザ・スターでは、この問題を採り上げている。
国民の信頼を損なう行為
社説によれば、2つの事件は、ここ3週間余りの間に連発した。11月24日、入国管理局の職員34人が違法入国を手引きする組織と関係していたとして検挙された。このうちの一人が、ハイジャックや車両窃盗の犯罪歴がある、いわゆる前科者ことが明らかになった。マレーシア反汚職委員会の捜査によると、この職員は、ロールスロイス・ファントム、マスタング、アウディ、レンジローバーといった4台もの高級車を所有していたという。
さらに、ジョホールバル警察本部の拘置所の担当警察官9人が、違法薬物を持ち込んだ疑いで逮捕されたが、このうち1人が2017年に強盗の罪で検挙されていることが分かった。
社説は「警察官や入管職員といった法律を執行する公務員に、直近の犯罪歴があったことを知って国民は驚いている。マレーシア人事院の採用規定によれば、公務員に採用される人たちは、犯罪歴を含めて詳しく経歴を調査されることになっている。今回の2人は明らかにこの厳しい審査をくぐり抜けて採用されていることから、人事院の採用規定に問題があることは明らかだ。なぜそのようなことが起きたのか。単なる手違いか、それとも悪意があるのか」と、疑問を呈する。
さらに、「このような出来事は、国のシステムや法の執行に対する国民の信用を著しく損なう。過去に法律に違反した人が、法を執行する立場に採用されるということが、どうしたら起きるというのか。これら2件は偶然の出来事なのだろうか。ほかにも同じようなことが起きているのではないか」と、指摘する。
経歴の再調査を
これらの事件を受け、社説は彼らを採用したマレーシア人事院に対応を強く求めている。「人事院は早急に透明性の高い対応をして採用手順の問題点を見つけ出さなくてはならない。人々の信頼を回復し、人々に政府公務員の採用に際しては厳しい採用基準があるということをしっかり示さなくてはならない。特に、警備や法執行に携わる分野については、なおさらだ」
社説は人事院に対し、警備や法執行に関する職務につく公務員については、経歴を再調査することを提案している。「時間も経費もかかるが、犯罪歴のある人を雇うような悪循環を断ち切るためには、それしかないのではないか」と、厳しい。
社説は、「犯罪歴のある人」を、「腐ったリンゴ」だとたとえる。樽の中に腐ったリンゴが一つあれば、ほかのリンゴも腐敗が進むので撤去せよ、という意味だろう。しかし、果たしてリンゴを取り除くだけで樽の中は健全に保たれるのだろうか。問題はもっと根深いような気がする。
(原文: https://www.thestar.com.my/opinion/columnists/the-star-says/2020/12/06/psd-cannot-allow-tainted-apples-to-spoil-the-barrel)