厳しく問われる建設許可の実態
~シアヌークビルのビル崩壊事故
- 2019/7/16
建設作業員ら28人が犠牲に
カンボジア南部プレア・シアヌーク州のシアヌークビルで6月22日、建設中のビルが倒壊し、建築作業員ら28人が犠牲になった。ビルは7階建てで、ビルの所有者である中国人や建設会社の関係者ら4人が当局に拘束された。その後の調べでこのビルには建築許可が下りていなかったことが判明するなど、プレア・シアヌーク州当局のずさんな管理体制に責任が問われ、ユン・ミン州知事は辞任。しかしその数日後に、同氏が国防省の幹部に昇格が決まったことから、世論の批判を浴びた。
シアヌークビルはここ数年、中国資本が流入し、建設ラッシュとなっている。「中国化するカンボジア」の象徴としてマスメディアでもたびたび取り上げられ注目されていたなかでの事故だったため、さらに注目された。しかし、クメールタイムズの社説は、「中国資本」を批判するのではなく、カンボジア側の責任として、建築行政の甘さや建設業界全体の問題を指摘している。
ずさんな建設現場
この倒壊事故は、警告となった。もし、基本的な建築基準に従い、建設現場のワーカーたちに適切な宿泊施設が提供されていれば、28人もの命が犠牲になることはなかった。ワーカーたちは、建設現場の完成したフロアで寝泊まりしていたのだ。
建築許可は、建物の大小にかかわらず、また、管轄当局が市であろうと州であろうと、必ず取得されているかどうかをしっかり確認しなければならない。首都プノンペン、たとえば高級住宅地のバンケンコン1区をみてみると、建物がキノコかヒナギクのようににょきにょきと狭い道路を挟んでたくさん建てられている。建築資材は道路わきに放置され、車両の通行を阻んでおり、建築現場周辺はどこも渋滞している。
市街地計画はいったいどうなっているのか。建築物の密度、インフラのアクセシビリティ、緊急車両の通行、消火設備や建物内での消火活動のこと、基礎の杭打ちの強度、コンクリートの強度、柱やはりの太さ、床の厚さ……このようなことを考えているのだろうか。