「軍の標的になったサンチャウン」
住民たちから守られているデモ隊の若者たち

  • 2021/3/24

【編集部注】

若者の街とも言われるヤンゴンのサンチャウン地区。今月上旬には、多数のデモ隊がこの一角に追い込まれ惨事が懸念されました。ここでは、この街の今の様子を伝えるFacebook投稿をご紹介します。
 
~ 以下、Facebook投稿より ~

路肩に積まれているのはバリケードに使われた土のう。住民に強制労働で片付けさせた(筆者撮影)

 
 サンチャウンは軍の標的になった街のひとつだ。一時は毎日のようにデモが行われその度に軍に包囲されて実弾発砲もあった。3月8日には深夜数百人の若者達が軍に包囲され大量逮捕される危機もあった。そのサンチャウンに住む友人宅へ3日前(3月19日)に訪れた。
 まず、サンチャウンを訪れるには軍がいる位置を把握しなければならない。下手に軍が配備されている前を通ると何をされるかわからないからだ。
その日はバホー通りが通れることがわかった。クーデター前まではいつも渋滞していたバホー通りだが、今は車がほとんど走っていない。静かだ。ところどころバリケードの跡が残り、ゴミやブロックの残骸が散乱している。まるで戦場の跡だ。
 友人宅の前の路地も昼間というのに誰も歩いていない。サイカーが1台通っただけだ。3月のヤンゴンは40度近い気温で太陽がギラギラしている。その照りつける太陽さえも不気味に見える静けさだ。
久しぶりに会う友人夫妻はあたたかく迎えてくれた。早速最近のサンチャウンの様子を伺うことにした。
 田舎に戻った人も多く、2, 3日前から表に人が出歩かなくなったという。それでも近くの朝市は開いている。ただ、通常は6時から12時ぐらいまで開いていた朝市が最近は10時には閉まる。
米屋や雑貨屋などの小さな商店は一見すると閉まっているように見えるが声をかけると開けてくれる。これは軍対策だ。兵士がやってくると勝手に店のものを盗んだり壊していくので、怖くて店を開けられない。
以前はサンチャウンのいたるところにあったバリケードは、軍による強制労働で住民たちによって撤去された。たまたま近くにいた住民や、たまたま現場を通った車の運転手を捕まえて強制的にバリケードを撤去させたのだ。それでも足りない場合は近くのアパートの住民に労働力の提供を強制させた。相手は銃を持った軍だ。住民は逆らえない。こうしてバリケードの設置を地域の全体責任とさせることで、新たにバリケードを設けることを難しくさせている。
 地区の警備には自警団を結成して、夜中でも常に外で警備をやっていたのだが、最近それも止めたと。他の地域では軍による発砲で自警団員が殺されたということもあったからだ。ここサンチャウンも常に軍がいるので夜は危険である。

バホー通りを歩く警察官(警察の制服を着た兵士かもしれない)(c) 筆者撮影

 この地区では外での警備の代わりに集会所に設置した監視カメラの映像をチェックしている。監視カメラはクーデターが起こった後に設置したものではなく、去年設置したものだ。
 去年、新型コロナウイルスの対策で夜10時から朝4時までの外出禁止が出された以降、車上荒らしが増えた。その対策で、地区の人たちがお金を出し合って何箇所かに監視カメラをつけたのだ。それが意外なところで役立つことになった。ただ、軍により1箇所のカメラが破壊されてしまったという。
この監視カメラは他にも役に立った。ある日、軍と接触している地区の住民を監視カメラが捉えたのだ。彼はダラン(密告者)だった。こうした密告者はいろんなところにいて、住民から恐れられている。見つかった密告者はその日のうちに自分の住居からどこかへ逃げていったという。
 サンチャウンは軍に対する抗議運動のメッカのひとつとなっているのはなぜだろうか。ここは庶民的な街で国軍など権威的なものに元々反感が強かった。また、アパートが密集していて路地も多く、逃げ込みやすいとも言える。そして、住民たちもまとまっていて、デモ隊の若者たちを体を張って守る人が多い。実際、デモ隊を匿ったために軍から暴行を受けた人もいる。
 サンチャウンでのデモは小規模になったが今でも続いている。若者たちはデモをやる前に地区の人たちに挨拶に来るという。デモは国民が抗議を続けているという証にもなる。みんなを勇気づけるのだ。そして、デモ隊の若者たちはサンチャウンの住民たちから守られている。
 
 
引用元リンク:https://www.facebook.com/photo/?fbid=3859788057393565&set=a.443467465692325

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