ミャンマー情勢めぐるASEAN合意をタイはどう伝えたか
踏み込んだ内容を評価も実効性には慎重な見方

  • 2021/4/29

 インドネシアの首都ジャカルタで4月24日、ミャンマー情勢について話し合う東南アジア諸国連合(ASEAN)の首脳会議が開かれた。2月1日にクーデターにより権力を掌握し、抗議行動を続ける自国民を700人以上殺害しているミャンマー国軍のトップが参加したことで、どのような対応をするか国際的に注目された。4月26日付のタイの英字紙「バンコクポスト」は、社説でこの問題をとりあげた。

2021年4月24日、インドネシア大統領府でミャンマー問題を協議するためにASEAN首脳会議が開催された (c) Indonesian Presidential Palace/AFP/アフロ

5つの合意点

 ASEAN首脳会議には、各国首脳に加え、ミャンマー国軍トップのミンアウンフライン最高司令官が参加した。
 閉会後に出された議長声明によれば、 
 ①ミャンマー国内での暴力を即時停止すること ②すべての当事者が建設的な対話をすること ③対話を促すためにASEANの特使を派遣すること ④ASEAN防災人道支援調整センターによる人道支援を受け入れること ⑤特使を受け入れること―――の5点で合意したという。
 これについて、社説は「ASEANの首脳陣は、ミャンマーの危機に対して重要なマイルストーンを設置することに合意した」と評価したうえで、「これまでに700人以上が殺害されている現状について、ミャンマー国軍を正面から批判することができなかった」とも指摘し、次のように述べる。
 「ASEANの働きかけがミャンマー情勢の解決につながるかどうか、現段階で判断するのは時期尚早だ。ASEANの首脳陣は、ミャンマー国軍のミンアウンフライン総司令官と面会し、ミャンマーが直面している政治的な危機にどう取り組むか話し合った。これまでASEAN加盟国が互いに国内の政情について議論しないという内政不干渉の原則を掲げてきたことを考えれば、今回合意した上記5点いずれもきわめて踏み込んだ内容だと言える」
 確かに、これまでASEAN加盟10カ国が半世紀以上にわたって毎年欠かさず会議を開催してこられた理由は、互いの「触れられたくない事情」には踏み込まない「内政不干渉の原則」と、「全会一致の原則」が背景にあったことが大きい。しかし今回は、アウンサンスーチー氏が率いる「国民民主連盟」(NLD)を支持する人たちが中心となって「国民統一政府」(NUG)を樹立したこともあり、朝日新聞によれば、ASEAN側はミンアウンフライン氏の肩書を「国軍司令官」として、他の首脳とは区別するなど配慮がみられたという。また、総司令官がASEANからの人道支援や特使派遣の受け入れについて反対しなかったと報じられているが、これも氏の立場を一国の正式な代表とはせず、あえてあいまいにしたことによって、ASEANにしては踏み込んだ内容の議長声明が可能だったとみられている。

入り混じる期待と疑念

 しかし、ミャンマー国軍への配慮もなかったわけではない。社説は、「ASEANの首脳陣がミャンマー国内における暴力の即時停止に言及した際、<すべての関係者が最大限の自制をすること>と表現した。その中には、クーデターに抗議する市民側の暴力の自制も含まれている」との見方を示す。そのうえで「それでも、ASEANが長きにわたり内政不干渉の原則を順守してきたことを鑑みると、700人以上の市民を虐殺しているミャンマー国軍への直接的な非難が盛り込まれなかったとはいえ、今回の議長声明が従来に比べかなり踏み込んだ内容であることに変わりはない」と述べる。
 社説によれば、国民統一政府側もこの議長声明について、「ASEAN首脳陣がミャンマーの危機に取り組むことに合意したことは勇気づけられる」と評価していることに触れたうえ、「ASEANがこれからミャンマーの民主主義を再建するために毅然として行動してくれることを期待する」という国民統一政府のドクター・ササ報道官のコメントも紹介している。
 その一方で、こうしたASEANの合意が実際にどれぐらい実効性があるかについて、社説は慎重な姿勢を崩さない。
「4月24日にミンアウンフライン総司令官が各国首脳との会議に臨んでいる間にも、ミャンマー軍はクーデターに抗議する市民らの殺害を続け、少なくとも1人が命を落とした。これは、ミャンマー国軍がいかにASEANや国際社会の懸念を意に介していないかということの表れだ」「ミャンマー国軍は、ASEANの特使だからといって、顔を立てるという気遣いはほとんどしない。実際、マレーシアの前外相がミャンマーを訪れた際も、当時、軟禁下にあったアウンサンスーチー氏に面会できないまま追い返されたことがあった」
 ASEANが内政不干渉の原則を乗り越える難しさと、ミャンマー国軍の性質。バンコクポストの社説には、隣国として、また、ASEAN加盟国としてミャンマーと共存してきた国ゆえに抱える期待と疑念が入り混じる。

 

(原文:https://www.bangkokpost.com/opinion/opinion/2105391/asean-speaks-out-on-coup)

 

 

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