「ボージョーアウンサンマーケットは開いていたが・・・」
時間が止まったかのようなヤンゴン最大の市場

  • 2021/6/28

【編集部注:】

クーデターの発生から間もなく5カ月が経つミャンマー。最大都市ヤンゴンでは、国軍の厳しい弾圧によって抗議デモが小規模化し、厳しい監視下ながら市民生活が徐々に「平常」に戻りつつあるという声もある一方、以前と同じ状況とは到底言えないのが実態のようです。ここでは、英国植民地時代に建てられたヤンゴン最大のマーケット、ボージョーゼー(「アウンサン将軍の市場」の意)の現在の様子を伝えるnote の投稿をご紹介します。

~ 以下、note 投稿より ~

 昨年の9月からボージョーアウンサンマーケットはずっと閉鎖されていた。もともとは新型コロナウイルスへの対策であったが、2月1日からはクーデターでミャンマー国内が大混乱になったため、ボージョーマーケットも閉まったままだろうと思っていた。というか、誰も気にしていなかった。

 ところが、ボージョーマーケットはこっそりと再開していた。

 午後3時前、雨季の晴れ間は蒸し暑い。正面玄関から入ると暗かった。本来なら最も人通りが多いメイン通りに誰もおらず、ひとつの店も開いていない。ボージョーマーケットの内部は時間が止まってしまったかのように、ひっそりとしていた。

 メイン通りの左右には何本もの細い通路が伸びている。ひとつひとつ見ていくが廃墟のように黙っている。何本目かの通路を過ぎてやっと見つけた。明かりがついている店があり、店主と友人らしき二人の男たちがいた。

 彼らのほうに歩いていくと、三人の会話が途切れ、怪しむような目で私を見つめていた。私はこれ以上無理だというぐらいニコニコして
 「こんにちは、私は日本人です」と、声をかけた。すると、固かった彼らの顔が緩んだ。今の時期、ミャンマーでは身も知らずの相手には誰もが身構える。軍関係者ではないか、密告者ではないかと。こういうときは外国人は得だ。

普段なら人通りが多いメイン通りには人の気配がなかった

 彼らはインド系だった。店のオーナーに聞くと、家にいても何もやることがないので、店に出てきたという。もちろん、店を開けても売上は微々たるものだ。それでもやっていけるのは、店の権利を自分で持っているからだ。中には場所を借りて営業をしている人たちもいる。しかし、長く続いた新型コロナウイルスの後にこのクーデター、壊滅的なダメージを受けた。場所を借りていた人たちはボージョーマーケットでの商売をあきらめてしまった。

 メイン通りは観光客や外国人相手の店がほとんどだから全ての店が閉まっていた。一般のミャンマー人が訪れる場所はどうだろうと歩き回った。少しは店が開いていたが1割も開いてない。買い物客もほとんど見かけなかった。

 昨年から新型コロナウィルスの影響でずっと閉まっていたボージョーマーケットであるが、まだデモが盛んだった4月後半に開いたという。新型コロナウイルスは検査数が以前の1割程度にまで激減したために発表される陽性者数は少なくなったが、実際はどれ位まん延しているか分からない。

 地元の人に聞くと、軍が国をちゃんと統治できているというのを見せるため、ヤンゴンの象徴的な市場であるボージョーマーケットを開かせたのだという。そういえば、ヤンゴンのシンボルであるシュエダゴンパゴダも、デモが盛んだった時から参拝ができるようになっている。

 本当に軍がミャンマーを統治できているかどうかは、ボージョーマーケットの内部を見れば明らかだ。

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