【歩く・見る・撮る】― 写真民俗誌/民族誌へのいざない ―
ミャンマー(ビルマ)から ⑳ <船のある生活>

  • 2024/5/7

ミャンマーで国軍が与党・国民民主同盟(NLD)を率いるアウンサンスーチー氏らを拘束し、「軍が国家の全権を掌握した」と宣言してから3年以上が経過しました。この間、クーデターの動きを予測できなかった反省から、30年にわたり撮りためてきた約17万枚の写真と向き合い、「見えていなかったもの」や外国人取材者としての役割を自問し続けたフォトジャーナリストの宇田有三さんが、記録された人々の営みや街の姿からミャンマーの社会を思考する新たな挑戦を始めました。時空間を超えて歴史をひも解く連載の第20話です。

 ⑳<船のある生活> 

 一本の川の流れが日々の実生活に支障をきたしている地域がある。ビルマ(ミャンマー)を回っていて、何度となくそう思ったことだろう。川の大きさには大小あれど、向こう岸に行くには、船に頼るしかない。橋で対岸とつながったら、どれだけ便利だろう。橋が架かり、道路が通れば、確かに便利だ。橋の存在が、豊さへの道しるべともなる。だが、しかし・・・と訪問者は思ってしまう。
 最大都市ヤンゴンから南のデルタ地帯の辺りは、多くの河川が入り組んでいる。その河川を使って移動する人びともいれば、川があってこそ成り立つ生活もある。川を往く小舟の様子の長閑かさに、自然と人間生活の豊かさを感じてしまう。だが、しかし・・・と訪問者は思ってしまう。
 そこで故中村哲氏の次のひと言は、いかようにも解釈できる。

「旅人には心地よい光景も、そこに定着する人びとの生活の中に立ち入ると、たちまち豹変する」(中村哲『アフガニスタンの診療所から』筑摩書房、1993年、P.152)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

関連記事

 

ランキング

  1.  2026年8月、ネパール中部を大規模な土石流が襲いました。ヒマラヤでは気候変動に伴う氷河の融解…
  2.  2026年8月26日、中国とネパールの国境地帯を大規模な氷河土石流が襲いました。気候変動による…
  3.  第2次トランプ政権の発足後、アメリカは国際開発庁(USAID)を廃止し、対外援助を大幅に削減し…
  4.  ミャンマー西部ラカイン州に多く暮らす少数派イスラム教徒ロヒンギャ。長年にわたり市民権を認められ…

ピックアップ記事

  1.  2017年8月25日、ミャンマー西部ラカイン州でロヒンギャの武装勢力が国境警察施設を襲撃したことを…
  2.  2016年7月1日にバングラデシュの首都ダッカで発生したホーリー・アーティザン・ベーカリー襲撃テロ…
  3.  2016年7月1日夜、バングラデシュの首都ダッカで、日本人7人を含む多くの命が奪われたホーリー…
  4.   ミャンマーの街角や人々の暮らしを伝える「Yangonかるた」と、その発想に触発されて誕生した…
  5.  30年前、内戦直後のカンボジアで、戦火をくぐり抜けて残った数本の在来種の胡椒の木を大切に育てる老農…
ページ上部へ戻る