「ミャンマーの今を伝えるCNNの報道」
軍に囲まれた記者に届いていた市民の声

  • 2021/4/12

【編集部注:】

ミャンマー情勢が悪化するなか、軍が4月上旬、CNNに国内取材を許可しました。ここでは取材をコントロールしようとした軍に行動を制限される中でも、決死の覚悟で市民が伝えるメッセージを取材陣が受け取り、報道したことを伝えるFacebook投稿を紹介します。

 

~ 以下、Facebook投稿より ~

(c) CNNのHPより (https://edition.cnn.com/2021/04/08/asia/myanmar-zaw-min-tun-interview-intl-hnk/index.html?fbclid=IwAR0mznJAX8m16ZCaV2EylvagVdUiSVsRDBdOQ07O0l_TvpnGHeAUEzZVzc4)

みなさん、10分ください。
ミャンマーの今を伝えるCNNの報道を、観てくれませんか。
その日、CNNの取材チームは完全に軍の車に囲まれ、軍の監視のもと、軍が決めた場所で取材をさせられていました。
なんとかして本当のことに気づいてほしい市民たちは、
SNSで「〇〇地区にいるぞ」「〇〇通りを南下している」などとCNNの居場所を伝え合い、昼間から危険を承知で鍋を叩き、3本指を立てていました。
それを防ぐためか、ヤンゴンは昼から停電に。
人々はインターネットへのアクセスを失いました。
そんな中で敢行されたCNNの取材が、この報道になりました。
 ↓↓
https://edition.cnn.com/…/myanmar-zaw-min…/index.html
私は正直、CNNが今後も軍に取材を受け入れてもらえるように、
軍におもねるようなことを報道するかもしれない、と思っていました。
頼むから、変なこと書かないでくれよ、と祈っていました。
でも、CNNはキッパリと市民側にたち、勇敢な報道をしてくれた。
軍に囲まれたCNN記者に届くはずのなかった市民の声は
市民の覚悟と勇気によって、きちんと届いていたのです。
報道は英語なので、一部をおおまかに和訳しました。
以下を読んで映像をみてもらえば、だいたいわかると思います。
(英語でOKの人は、以下は読む必要ありません)
___ 
CNNの取材はすべて、軍の監視下で、厳しくコントロールされた。どこで何をするのにも、ぎっしり兵士を乗せた6台のトラックがついてきた。
ヤンゴンの区役所には、抗議運動のせいで怪我をしたという被害者たちが待ち受けていた。市民に殴られたり脅されたり、自尊心を傷つけられたりしたと話した。
別の地区では役人が、抗議運動はうるさいし、5人以上で集まっているから法律違反だと文句を並べた。
記者「そうした法律違反をしたことと、子どもを含めた500人以上を殺すことが、対等なことだと思っているんですか?」
当局の監視役はこの質問に狼狽して、結局なにも答えなかった。
(中略)
私たちの動きを市民がSNSに投稿し始めると、軍は国内のWi-fiを遮断した。それでも私たちは車から、現実を垣間見ることができた。
(ベランダに並ぶ市民の映像。うち一人が一瞬、3本指を立てる)
記者「今ベランダにいた人が、私に3本指を立てたのが見えました。これは“ハンガーゲーム”(という映画)に出てくるサインで、この抵抗運動の象徴です。
私は今とても小さな声で話しています。当局の監視役に、今彼らが何をしたかを気づかれたくないから。(3本指を示したのがバレたら)彼らは危険な状況に陥りかねないのです」
(中略)
最後にようやく公共の場を訪れることを許された。地元の市場だ。
私たちは軍に囲まれていたので、こちらから人々にアプローチすることは控えていた。
でも数分もしないうちに、一人の勇敢な男性が3本指(反軍政を示すサイン)を示した。
(インタビュー)
記者「その3本指は何?何が言いたいのか教えて」
男性「正義だ。僕たちは正義がほしい」
すぐにもう一人が近づいてきた。
男性「僕たちには、何の武器もない。でも毎日戦っているんだ。毎日、ただこんな風にして(3本指)」
私たちが人々と話していることが広まると、ある確かな音が耳に届いてきた。鍋や皿を叩く音だ。
これは悪霊を追い払う伝統的な方法で、今は軍政への抵抗を示すサインになっている。
この音を聞きつけて、若い女性教師が私たちのところに走ってきた。
「私たちが求めるのは民主主義です。軍政なんて求めていない」
記者「今兵士たちに囲まれていますよね、、、こんな風に」
女性「全然怖くありません。怖がっていたら、ここにいる人たちはこんな風に鍋や皿を叩くことはできないはずです」
女性「暗黒の時代にはもどりたくないんです。私たちは声をあげられなくなってしまった。私たちは、たった10年しか民主主義を経験していないんです。
私たちには、武器もないし銃もない。ただ、言葉だけしかないんです」
しかし言葉でさえ、ここでは罪となる。
これ以上、人々の抗議の声がエスカレートしてはまずいと考え、私たちは市場を去ることにした。
(去り際の道路で)人々はクラクションを鳴らして、抗議の意を示した。
(映像:現金を引き出すために銀行に並んでいる大勢の人々が、CNNのカメラに向かって3本指を掲げる。
※CNNの車は、6台の軍車両に囲まれている。軍に向かって3本指を上げることは、今のミャンマーでは命がけだ。)
国軍は、人々の決意と、膨れ上がる軍へ憎しみを、あまりにも甘く見ている。
__
最後に私たちは、首都ネピトーで国軍幹部のゾーミントゥン広報官(以下ZMT)と面会するチャンスを得た。
ZMT「人々を弾圧する理由は、公務員が仕事をするのを妨げたからだ。国軍は、最初は言葉で警告し、空に向けて威嚇射撃をした。そうしたら、民衆は石を投げたり、パチンコ弾をうったりしたんだ」
記者「あなたは、石やパチンコ弾に対して、軍が戦場で使うライフルのような兵器を自国民に向けることが、マトモなことだと思っているんですか?」
ZMT「石やパチンコ弾だけじゃない。ガソリンや火炎瓶を使ったという証拠もある。暴徒の弾圧には、確かに死を伴う。でも我々は、何の規律もなくライフルを撃つような真似はしていない」
記者「このCCTV(監視カメラの映像)では、軍車両の横を通った17歳の少年がその場で撃たれていますよね。(軍の)検死の結果、彼は交通事故による脳挫傷とのことだったけれど、誰が見てもバイク事故とは思わないでしょう。これをどう説明するんですか」
ZMT「今このビデオが本物かどうか調べているところだ。真偽の疑わしい映像が色々あるのでね。無実の人々を撃つようなことはしませんよ」
記者「13歳や14歳の子どもも、軍に銃殺されています。彼らも暴徒だったのだというのですか」
ZMT「私たちが子どもを撃つはずはない。テロリストたちが我々を悪く見せようとしているだけの話だ」
これは根拠のない、うすっぺらな嘘だ。
国連の発表では、3月31日時点で、少なくとも44人の子どもが殺されている。
___
ヤンゴンに戻ると、当局の監視役が、今度は軍が支配するエリアにある別の市場に私たちを連れて行った。
軍が人々の支持を得ているところを見せたかったのだろう。でも、その作戦は裏目に出た。
男性「…We want democracy」
記者「…わかったわ」
一人の男性がすれ違いざまに「民主主義がほしい」と私に告げ、そのまま歩き去った。立ち止まって話をするのは怖かったのだ。
もっと大胆な人もいた。
(車から3本指を掲げる女性)
「私たちの国を救って!」
彼女たちは、民主活動家ではない。軍の脅威の中で生きる、ふつうの市民だ。
(インタビュー)
記者「鳥肌が立っているわね。それに震えているみたい」
女性「彼らは、人間じゃないの」
彼らは、世界に自分たちの痛みを知ってもらいたくて、必死なのだ。
一人の少女が怯えながら、私たちに近づいてきた。
「私たちは安全ではないんです。たとえ夜でも。彼らは子どもにも銃を向け、撃ちます」
(周囲では大勢の市民がスマホのカメラを向けている)
記者「私は、あなたにトラブルに巻き込まれて欲しくない。逮捕されてほしくないの」
彼女は、彼女のその勇気によって罰を受けることになるだろうとわかっている。それでもこうして抗議するのだ。この小さな行動は、大きな勇気に裏付けられている。
___
(字幕)
少なくとも8人が、CNNと話をした直後に拘束された。
のちに8人全員が解放されたことを確認した。
軍広報官のZMTに、彼ら(拘束された8人)が何の罪を犯したのか聞いたが、特に何の罪も犯していないとの答えだった。

(c) Clarissa Ward / Facebook

(c) Wutyi Tun / Twitter

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