「小中高校の再開とオンラインスクール構想」
子どもたちが自由な教育を受けられるようになるまで

  • 2021/6/18

【編集部注:】

ミャンマーで6月1日より新学期が始まっていますが、軍政下で子どもに教育を受けさせたくないと考える親たちが多く、大半の児童・生徒が登校していないといいます。民主派勢力が打ち出しているオンラインスクール構想とあわせ、現地の様子を伝えるFacebook投稿を紹介します。

~ 以下、Facebook投稿より ~

6月1日、ラカイン州の学校。開校初日の写真。 門の中にこんな警察いっぱいいたら行きたくないだろう。 私もヤンゴンで、学校の校門から兵士が出てくるのを見たことがある。校門の前に停まっていた軍のトラックに乗ってどこかに去っていったが、学校と兵士というのは異様な取り合わせだった (c) AFP

6月、ミャンマーの小中高校が再開した。
昨年1年間、コロナで閉校していたミャンマー。
今年出席しなければ、子どもたちの教育は、2年も遅れてしまう。
…にもかかわらず、地元メディアによれば、
ヤンゴンの生徒たちの出席率は、わずか1割程度だという。
軍政への不服従(=登校しない)を貫く市民たち。
その意志の強さと団結力には、本当に舌を巻く。
2児の母親である知人は、明るい口調でこう話してくれた。
「ママ友とのメッセンジャーグループで、確かめ合ったの。
 みんな、絶対に子どもを学校には行かせないようにしようね、って」
それでも、1割の生徒は学校に通っている。
そういう生徒や親たちは、市民からの批判の対象にならないのだろうか?
友人に聞いてみると、こんな答えが返ってきた。
「先生も生徒も、通学するときには制服を着ないように、って軍政がアナウンスしたんだ。
 だからみんな、制服持参で登校して、学校についてから着替えてる。
 学校だけじゃないよ。他の公務員も省庁職員も、今は制服を着ていない」
学校に行くことや、公務員であることを、隠さなければならないとは。
静かな異常事態。
(なお、学校に通学する生徒や公務員が誰かに襲われたりしてるわけではない。
おそらく軍は「学校に通学させたいけど、周囲に批判されるのでは」など心配する親がいると想定して
安心して軍政府に従ってもらうため、こんな通達を出したのだろう)
==
一方、NUG(民主派の新政府)は、市民の頑張りに呼応するように
オンラインスクールの開校を発表した。
もちろん無料で、民主政府になった暁には、正式な通学期間とカウントされる。
オンラインスクールに参加したい生徒たちは、
決められた日にGoogle formを使って登録し、Zoomで授業を受ける予定なのだという。
講師を務めるのは、主にCDMに参加中の教師たちだそうだ。
2月からCDMを続けている学校教師の知人は
「オンラインで教えるのは初めて。どうやって進めたらいいかな」と準備にそわそわ。
もう先生として登録したの?と聞くと
「うぅん、今度NUGと先生とのミーティングが開かれるから、それに参加するの」と言う。
NUG政府もバーチャルなら、学校もバーチャル。
公務員の給与はモバイルマネーで送金される予定だというから、
世界中のどこよりも先進的な政府が誕生したのでは、と思ってしまう。
ただ、NUGが4月にCDM公務員に約束した給与の支払は、まだ実現していない。
あらゆることが軍の監視下に置かれたミャンマーで、
送金者(=NUG関係者)の身元をバラさずに、数十万人に給与を支払うのは、想像を絶する難題だろう。
友人の学校教師も、もちろん給与は受け取っていない。
それでも彼女はこう言い切る。
「私は給与がもらえるからCDMを続けているわけじゃない。
 これは私たち自身の問題でもあるの」
==
オンラインスクールが始まるにあたって、個人的に心配なのは
軍によってインターネットが遮断されやしないか、ということ。
実は、先週の金曜、夕方5時に
2カ月ぶり?に全国で一斉にインターネットが止まったのだ。
え〜、なんでいきなり遮断したんだろう、と思っていたら
そこには何ともアホらしい事情があった。
実はその日5時から、NUGが国民向けに今後の方針などをアナウンスする予定だったのだ。
軍は、ミャンマー人がそれを観るのを阻止するため、全国のインターネットを切った。
電話をかけてきた友人は「本当に軍はアホだよね」と鼻で笑った。
「インターネットが繋がったら、また何回だってできちゃうのに」
そして、約1時間後にインターネットが復活すると、
外国を拠点にしている(=ネット遮断の影響を受けない)ローカルメディアなどが録画をUPし
NUGからのアナウンスは、すぐに国民の知るところとなった。
「結局、軍は、自分たちはNUGが怖い、というのをみんなに晒しただけ」と
友人は、愉快そうに笑い飛ばした。
オンラインスクールも、もしかしたら軍に邪魔されるかもしれない。
だけどこの調子なら、ミャンマー人たちは、軍の嫌がらせさえ弾みにして、さらに元気に高みを目指すだろう。
軍政をひっくり返し、民主的な国をつくり、
子どもたちが自由な教育を受けられるようになるまで
まだまだ市民の抵抗は続く。

軍の奴隷制教育には従わない!というスローガンで、全国規模でデモ活動が続く。 こちらはカチン州。Tamakhan Myothit というこの町では、6月1日以降、ただの1人も学校に出席していないのだという (c) Myanmar Now / Twitter

これは2月末の写真。 赤スカーフの「治安部隊」たちが、非暴力で声を上げる先生たちを攻撃している。まだ学校に通っていた生徒たちも、たくさん逮捕され、殺された。 軍政下で学校が再開しても、先生たちが職場に戻らないのが頷ける (c) AAPP

軍営紙には、しばらく連日「みんな学校に通えてハッピー」という(プロパガンダ)写真が載せられていた。茶番 (c) 軍営紙Global new light of Myanmarより

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