「現金を求めて列をつくる市民たち」

  • 2021/5/19

【編集部注:】

クーデター後、国内の銀行や現金自動預払機(ATM)での現金の引き出し額に制限が設けられたミャンマーでは、現金を求める市民が連日、長蛇の列をつくっています。銀行不信と金融崩壊により打撃を受けている人々の生活を伝えるFacebook投稿を紹介します。

~ 以下、Facebook投稿より ~

Wai Yanさんによる風刺画。 クーデター後に人気者になったものランキング。 1位:ATM 2位:光ファイバー 3位:電子マネー うーん、たしかに。笑 (c) Mizzima News in Burmese/FB

「今日は夜中3時半から銀行に並んだの」
・・・は?夜中3時半!?
彼女は疲れた声で、さらに驚くことを言った。
「でも、もうその時点で、100人もの行列ができていたの。
 朝9時に窓口が開くまで6時間ちかく待ったけど、
 結局、私はお金をおろせなかった」
彼女が住むのは、ミャンマー中部の地方都市だ。
その町には、銀行でお金をおろすべく、周辺の農村部から
毎日何十人もがバスをチャーターしてやってくるのだという。
こうした状況下で、新たな商売も生まれる。
たとえば、本人の代わりに銀行の列に並んでくれる「並び屋」。
知人は5000Ks(400円)で、朝5時から14時半まで並んでもらったという。
でも、結果は散々だった。
並び屋から「そろそろ順番がくるよ」と連絡をもらい、意気揚々と出かけたものの
もうすぐ自分の番、というところで、現金が切れたのだそうだ。
「5000Ks 払って、結局1Ksももらえなかった」と嘆く。
今、ミャンマーの人々は、来る日も来る日もをこんなことを続けている。
銀行に預けた自分のミャンマーチャットを、取り戻すために。
___
同僚も、毎日仕事を早退してATMに並んでいる。
「現金がないとやばいんだよ」と、困ったように笑う。
とにかく手元に現金がないと暮らしていけないのだという。 
確かに、これまではクレジットカードで会計できていた大手スーパーでも
今月からは現金しか受け付けなくなった。
ミャンマー中みんな、とにかく現金がないのだ。
「ATMからは、週2回、3ラック(2万5000円)ずつおろせるんだ。
 僕の貯金は30ラック(25万円)だから
 毎週6ラック(5万円)ずつおろしても5週間かかる」
とはいえ「週2回」というのは、あくまでルールの話。
実際には、銀行窓口やATMの現金がなくなれば、そこでおしまいだ。
実際、彼も1週間ほぼ毎日行列に並んでいたけれど、
現金を引き出せたのは、たった1回だった。
30ラックすべてを取り戻すのに、一体どれくらいかかるだろう。
彼は言う。
「ATMの機械には、先週まで毎日1台につき600ラック(500万円)補充されてた。
 でも今週から、補充されるのは1台あたり200ラック(160万円)になったんだ。
 毎日並ぶ人は増えるのに、扱う現金は3分の1。とても行き渡らないよ」
それでも、きちんと補充されるならまだマシで
実際には、待てど暮らせど現金が補充されないこともある。
何時間も待って手ぶらで帰るなんて、想像しただけでくらくらする。
(この季節、ヤンゴンの体感気温は45度を超える)
逆に、ラッキーハプニングもある。
各社の「ATM車両」なるものが、町を回っているのだ。
この車は、ランダムに各社のATMのそばにあらわれるそうで
この車がくると、ATMに並んでいた人たちが分散してお金をおろすことができる。
___
銀行の支店によっては、行列をつくらせるのではなく
トークン(引換券)を配るところもある。
しかしこのトークンも、またたく間に配布完了となった。
CB銀行のA支店では7月末まで、KBZ銀行のB支店では8月末まで(!)のトークンをすでに配り終えたのだという。
きっと今後、市場に出回ったトークンが高値で取引されるようになるだろう。
___
こうした状況で暗躍するのは、ヤミ金?業者だ。
インターネットバンキングなどで指定の口座に送金すると、
ミャンマーチャットを払い出してくれる。
ただし手数料が高い上、その値段も上がり続けている。
ある友人は、興奮気味にこう教えてくれた。
「2週間前に業者をつかったとき、手数料は2.5%だったのね。
 それが、たった2週間で、10~15%になったの!
 100チャット(8円)でも惜しいときに、10%なんてとても無理だよ」
上がっているのは、手数料だけではない。
ミャンマーチャットを信用しない市民たちが、現金で貴金属やドルを買うので
そうしたものの価値が爆上がりしているのだ。
クーデター前に1$=1350チャットだった換金レートは、今や 1750チャット。
(日本円でいうと、1000円札が750円の価値しかなくなった感じ?)
金(ゴールド)に至っては、ある重さ(ミャンマーの単位)に対し
毎日5万Ks(4000円)ずつ値上がりしているのだという。
すさまじい価格沸騰に、同僚は
「Everyday(毎日)じゃなくて、Every hour(毎時間)、チャットの価値が落ちていくね」と苦笑した。
___
「私たちは基本的に、銀行を信用していないし
 ミャンマーチャットも信用していないの」
と語るのは、元銀行員の友人。
民間銀行の中には、いわゆる「軍系」の銀行もあるし
そもそも軍が全権を握った今、銀行から金を巻き上げることなんて簡単だろう。
そういえば3月上旬には、軍政がCDMを続ける民間銀行に対して
「業務を再開しなかったら、口座を強制的に政府銀行に移譲させるぞ」
という脅しをかけたこともあった。
(それでも多くの銀行は再開しなかった。あっぱれ。)
また、ミャンマーチャットに信用がないのは、過去の軍事政権の教訓でもある。
軍政府は、過去に3度、悪名高い「廃貨」をしているのだ。
「廃貨」というのは、例えば
「今日から一万円札は使えなくなりました」というアナウンスが出て
いきなり紙幣が紙くずに変わるという、ウソみたいな政策だ。
「社会主義の本当に貧しい時代に、長い間コツコツ貯めたお金が
 いきなり紙くずになって、気が狂った人もたくさんいたんだよ」
と、友達から聞いたことがある。
___
一見落ち着きを取り戻した町で、日々進行する異常事態。
政府を失った市民たちが、今日も現金をめぐって列をつくる。

ラッキーハプニングなATM車両! 並んでる時にこの車両がきたら、うれしいだろうなぁ(c) Gen Y Minso / FB

開店前の銀行に並ぶ人たち。街のいたるところでこういう光景が見られる。 いったいこのうち何人が、現金を手に入れることができるのだろう(c) The Irrawaddy Burmese edition/FB

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