「うちの子は、小学校には通わせない」
人質、治安、コロナの不安と葛藤する親たち
- 2021/5/28
【編集部注:】
子どもを学校に通わせるべきか否か――。新学期を前に公立学校の登録が始まったミャンマーで、保護者たちが苦渋の決断を迫られているそうです。市民的不服従運動(CDM)に参加している家族を脅すために子どもが人質に取られるのではないかという不安をはじめ、治安やコロナの懸念から葛藤する親たちの心情に迫るFacebook投稿を紹介します。
~ 以下、Facebook投稿より ~
「うちの子は、小学校には通わせない」
もしそう言う親がいたら、どう思うだろうか?
子どもがかわいそう?
親の身勝手?
ミャンマー全土では今、多くの親が頭を抱えている。
我が子のために、学校に通わせるべきか、否か。
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昨日から、ミャンマー全土で公立学校に通う生徒たちの登録が始まった。
毎年この入学登録のためにたくさんの親子が学校を訪れるらしいのだが
報道で見る限り、今年はどこも閑散としていたようだ。
私の友人も「息子は学校にはやらない」と決意の表情。
なるほど、『軍の奴隷教育には反対!』という意思表示だな、
と早合点した私に、彼女は切実な顔でこういった。
「息子の命が心配なの」
えっ、いや、そんな大げさな。
軍政下の小学校に通ったところで、兵士にされて戦場に連れて行かれるわけじゃないんだし。
そう思ったが、彼女の説明を聞いて、合点がいった。
「私の夫は、CDMに参加している公務員なの。
子どもが公立学校に通い始めたら
『CDMをやめて職場に戻らないと、子どもを自宅に帰さないぞ』と人質にとられてしまうかもしれない」
あぁ、それは・・・ありえる。残念ながら。
軍はいつもそうなのだ。
ターゲットの人物だけではなく、その人の周囲の大切な人たちを使って、追い込んでいく。
今までそうやって、ターゲットの配偶者や子どもたち・・・まだ生後数カ月の赤ん坊までが、軍にさらわれていったのだ。
「でも、学校に通う登録をしなかったら、それはそれでブラックリストに載るかもしれない。だから・・・登録の名前だけ書いて、通わせないようにしようかと思っているの」
・・・これは、どこかで聞いた話だ。
(ここです https://www.facebook.com/JapaneseDiaryFromMyanmar/posts/130468339120793)
ミャンマー人が概して得意とする、その場しのぎの柔軟性。(褒めてます)
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心配はほかにもある。
ひとつは治安。
最近、ヤンゴン市内ではどこかで爆発や銃撃が毎日のように起きている。
(ただしヤンゴン市内、といっても、ヤンゴンはかなり広大なので
そこらへんでバンバン爆発しているわけではない)
学校の周囲でも爆弾が爆発することもある。
新学期からの開校に反対する市民によるものか、そう見せかけたい軍によるものか、私にはよくわからない。
確実に言えるのは、学校でさえ安全ではないということ。
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さらにもうひとつの心配は、コロナだ。
実はミャンマーは昨年も1年間、学校は閉校していた。
(つまり、公立学校の生徒たちはみんなすでに1年留年している)
これは医療体制が脆弱なミャンマーで、感染爆発を防ぐための政策で
スーチーさんは「生徒みんながワクチンを打ったら再開します」と宣言。
ワクチンが開発されるや、日本とは比較にならないスピードで承認・輸入し、
色々な「不要不急」をあざやかに後回しにして、今年1月には接種をスタートした。
えっ、もう?と、私たちもその速さに驚いたものだ。
6月までに、すべての子どもにコロナワクチンをうつ。
そして、みんなが安心して学校を再開する。
そんなスーチー政権下のプランは、2月1日に終わった。
クーデター前は1日1〜2万件あった検査数も、
クーデター後は1日約1000件程度になり、最近はもはや公表もしなくなった。
友達は自嘲気味にこんなことを言っていた。
「隣の国でこれだけ流行っているんだから、ミャンマーにも絶対感染者はたくさんいるよ。でもね、軍は隠すよ」
軍が公立病院でワクチンを提供しているようだが、
少なくとも私の周囲で打っている人は見たことがない。
さらに今月追加でワクチンが届いたというが、中国からの支援とあっては、
市民たちが喜んで受けたがるとは思えない。
結局、コロナに関しては無策な状態で、学校は再開されようとしている。
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子どもたちは、もし学校に通わなければ、留年2年目になってしまう。
もちろん、それはどうにかして避けたい。
冒頭の彼女も「なんとか学校に行かせてあげたい」と、学費の安い私立のインターナショナルスクールを探す。
夫はCDMで給与を受け取ることができず、家計は心もとない。
それでも「民主政権になるまでだから」と、その復活を心から信じ、子どもの命を守ろうと奮闘している。