「来年こそは」
犠牲者を悼み自粛された水かけ祭り

  • 2021/4/14

【編集部注:】

4月13日に新年を迎えたミャンマー。2月1日以降、軍の弾圧によって700人以上が犠牲になったことを悼んで恒例の水かけ祭りを自粛しているヤンゴン市民が、新たな年に期待を寄せる様子を伝えるFacebook投稿をご紹介します。

~ 以下、Facebook投稿より ~

 水かけ祭りの初日であるはずの13日、街に出ると通常通りの日常がそこにはあった。休みであるとの雰囲気さえなく、市場はそのまま開いていた。水をかける子どももいなかった。
 真面目なミャンマー人たちの、年に一度の乱痴気騒ぎ。4月中旬の正月休みに行われる水かけ祭りは、まさにそう呼ぶのがふさわしい。道を歩けば子どもに氷水をかけられ、消防用かと思わせる強力な放水でずぶねれになりながらと踊る。音楽やダンスの舞台の前をトラックの荷台に乗って通り、水の掛け合いをする。裏通りを歩けば、炒めご飯のダンパウや、麺料理のモヒンガー、白玉団子のモーローイエボーを何百食も通行人に振る舞う。
 その何よりの楽しみである水かけ祭りが、2年連続で行われていない。昨年は新型コロナ対策、今年はクーデターのためだ。市民は、クーデター側が祭りを行うことで平和であるとアピールしたがっていること、また700人以上の弾圧の犠牲者を悼む意味で、祭りを自粛しているのだ。
 休日に、することがなく近所の人と家の前でハイネケン系のビールを飲んでいた男性は「祭りはボイコットだ。だけど悲しい」と話した。
 しかし、よく見ると、僅かに季節感を感じる部分もある。子どもは、店の中や庭で水をかけて遊んでいた。この季節に飾る花と土瓶の店も盛況だ。そして、私が裏道で声をかけられたのは、わずかに机一つだけ出して、お茶や伝統菓子のサヌンマキンを振舞っていたおじちゃんたちだ。本来なら、住民総出で炊き出しをして振る舞うのが通常だ。ささやかでも、自分たちの祭りの気分を味わいたいということなのだろう。この菓子も食え、コーヒーもいるかと次々と勧められる。
 いろんな話に花を咲かせる中でおじちゃんは言った。「来年こそは祭りをやる。民主主義を取り戻してね」。

水かけがなくひっそりしたスーレーパゴダ(筆者撮影)

2016年の水かけ祭りでのスーレーパゴダ(筆者撮影)

 

(動画は土瓶を売る屋台とモーローイエボー屋台)

引用元URL:https://www.facebook.com/yuki.kitazumi.92/posts/4222705817811276

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