タイ政府は「難民」政策を見直せ
地元英字紙がミャンマーからの避難民救済と積極関与を訴え

  • 2022/1/19

 昨年12月、ミャンマー軍と、カレン民族同盟(KNU)の軍事組織であるカレン民族解放軍(KNLA)が武力衝突し、ミャンマー軍はカレンの人々が住む地域を空爆した。これにより、KNLAだけでなく多くの住民が国境を接するタイ側に難民として逃れている。2022年1月9日付けのタイの英字紙・バンコクポストは、この問題を取り上げた。

ミャンマー軍の空爆を逃れ、モエイ河を渡りタイに逃れる人々 (2022年1月6日、メソットで撮影)(c) ロイター/アフロ

危険にさらされる人々

 バンコクポスト紙は、「攻撃はクリスマスの日に最悪の事態となり、数千ものカレンの人々が国境を流れるモエイ河を渡り、タイ側のメソットに逃れた。ミャンマー国軍がカレン族の拠点を攻撃した際には、メソットにも流れ弾があり、その住民たちも避難をすることになった。タイ政府はこのことについて沈黙を守っている」と、タイ政府の姿勢を批判する。

 同紙によれば、ミャンマー国軍の攻撃は国境沿いの他の地域に対しても行われ、新たに多くの人々が戦火を逃れてタイへ押し寄せた。その数は最も多い時で7000人を超え、その多くが女性や子ども、お年寄りや障害者だという。

 「彼らは、避難所が封鎖され、緊急支援物資が不足し、ミャンマー側に強制帰国をさせられることが目に見えているためにタイ側に逃れ、身を隠しているが、こうした状況により、彼らは却って危険にさらされている。その一方で、ミャンマー国内の紛争地帯に閉じ込められ、逃げ場もないまま、食べ物やその他の必需品も手にできず身を隠している人々も数万人に上る」

 さしかし、タイに避難した人々はシェルターに収容され、NGOなどから自由に支援を受けられない。食料をはじめ、必要物資の支援はすべて軍を通さなければならないためだ。社説は、「タイは難民条約に署名しておらず、“タイ国内には保護されるべき難民はいない”という立場をとっている。難民に対する支援を受け取ることができないのはそのためだ」と指摘し、次のように訴える。

 「タイ政府は、戦争や暴力や迫害から逃れてタイに入国する人々のことを“違法入国者”として扱い、強制帰国させようとする立場を取っているため、国境地帯のキャンプなどで暮らす“避難民”や、亡命を希望する人々は、タイ国内で希望の持てない厳しい状況下に置かれてしまうのだ。難民条約の署名国であろうとなかろうと、タイ政府は、ノン・ルフールマン原則(生命や自由が脅かされかねない人々の入国を拒んだり、強制送還したりすることを禁止する国際法上の原則)にのっとり、彼らを送還しない国際法上の義務がある」

 その上で社説は、タイで2014年にクーデターが起き、国軍が実権を握って以降、たびたびこの原則が破られてきた、と指摘する。なかでも2015年に少数派イスラム教徒ロヒンギャの人々が数百人、ボートで流れ着いた時、死の危険性もあった彼らをタイ政府が上陸させなかったことは、世界に衝撃を与えた。

「タイ政府は抑圧者の味方をするのか」

 タイとミャンマー国境の状況は、今も流動的だ。ミャンマー軍とKNLAはひとまず停戦状態になっているものの、衝突はあちらこちらで散発しているという。

 「混乱が続くミャンマーからタイ側へ難民が逃れて来ることはこれまでもあったし、今後も起きる可能性が十分にある。タイは、これまでの経験を基に、状況を改善するために学ぶ必要がある」

 その上で社説は、ミャンマーの政治状況が、直接、タイに影響をおよぼすという視点から、次のように主張する。

 「タイ政府は、ミャンマーの政治的な暴力から、これ以上、目をそらしているべきではない。それは、タイ国内の治安、そして国際社会の評判にも関わる問題だ。軍事的な結び付きと、ビジネスの利益を強化する施策によって、両国の国境地帯に住む人々は、人道的にも社会的にも甚大な苦しみがもたらされている。ミャンマーの平和は、タイの平和につながる。タイ政府は、多様な民族が暮らすミャンマーと平和的に共存するために、事態の解決に向けてもっと積極的に関与するべきだ」

 さらに社説は、タイが難民条約に署名すべきだと訴えた上で、難民や亡命希望者を送還する姿勢を貫くタイ政府に対し、「抑圧者の味方をすれば、タイも抑圧者の仲間入りをすることになる」と、強く非難する。

 東南アジア諸国連合(ASEAN)の議長国となったカンボジアのフン・セン首相は、さっそくミャンマー国軍に近づき、ASEANに再び迎え入れようと動き始めた。ミャンマー軍と少数民族との「停戦」は、一応、2022年末まで延期されたものの、現実には衝突が今なお続いていると報じられている。政府の動きがどうあれ、紛争で生命の危険にさらされるのは、その地で暮らす国民だ。ミャンマーとは国境を接しないカンボジアには、国境の悲鳴が聞こえているのだろうか。

 

(原文https://www.bangkokpost.com/opinion/opinion/2244399/refugee-policy-needs-rethink)

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