「南ダゴンの惨劇」
「CRPHが唯一の希望だ」
- 2021/3/31
【編集部注:】
3月30日未明、ヤンゴンの南ダゴン地区が軍に襲われ、惨劇が起きました。ここでは、その夜の生々しい様子と、それでも希望を捨てず行動し続ける人々の姿を綴ったFacebook投稿をご紹介します。
~ 以下、Facebook投稿より ~
3月30日に日付がかわった頃。
そろそろ寝ようかと歯磨きをしていると、カンカンカンカン…と外で鍋を叩く音がした。
心臓がキュッと縮む。心拍数が上がる。
何?だれ?不審者?
電気を消して窓に近づき、おそるおそる音のする方向を見るけれど、誰もいない。
何かが起きている気配もない。静かな夜の路地だ。不安で、心がざわざわする。
15分くらいして音が止んだ。
さらに5分くらい待って、もう音が鳴らないのを確認して、布団に入った。
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翌朝スタッフが説明してくれた。
「昨日の夜、南ダゴン地区でひどいことが起きたんだ。
銃声がすごくて、家も燃えて。あと、人も燃えた…。
他の地区の人たちは南ダゴンを助けるために
騒ぎを起こして、注意を分散させようとしたんだよ」
「うちの近くでも、鍋を叩いたり、花火を打ち上げたりしてた。
でも、警察がきてバンバン威嚇射撃されて
どの家で鍋を叩いているのか、探し始めたんだ。こわかった」
Facebookを見てみると、
確かにその時間に「save southdagon(南ダゴンを助けて)」というハッシュタグがつけられた投稿が山のように上がっていた。
黒い炭になった、ご遺体の写真も…。
南ダゴンで何人もの人が殺害され、人々が命がけで鍋を叩いているその間、
私は現場からそれほど遠くない自宅で、何も気づかずに友達と電話していた。
「本当に軍やばいよね」とか言って。
何が「やばいよね」だよ。と自分に毒づきたくなる。
私はローカルアパートとはいえ、セキュリティがいる安全地帯に住む外国人だ。
焼き殺される心配も、突然家に押し入られて銃殺される心配もない。
どんなに心を寄せても、きっと私は全然わかっていないんだろう。
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カレン州では、国軍が3日連続で「空爆」している。
これまでも国軍は、抗議活動していない人でも見境なく殺してきたけれど
空爆となればさらに無差別。
そして空爆は、村全体を壊滅させることができる。
質素な竹の家は、一度火がつけばひとたまりもない。
この空爆で3000人ともいわれる難民が発生、タイに向かった。
家を焼かれた人たちは、もう帰る場所もないのだ。
本当に、なんてことをするんだろう。
ヤンゴンの空にも、昨日はブォォォーッとジェット機の音が何度も何度も聞こえていた。
その度になんとなく不安で、空を見上げる。
まさかこの平穏な人生で「空爆されるのかな」とリアルに心配する日が来るとは思わなかった。
もちろん、ヤンゴン空爆はまず絶対にありえない。
でも、この1カ月間、予想をはるかにこえた国軍の残忍さを見てきたせいで
「万が一」が起きる可能性をそこそこ現実的に考えてしまう。
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南ダゴンの様子に心を痛めていた同僚は「CRPHが唯一の希望だ」と言った。
CRPHというのは、民主政権の議員たちが軍政に対抗してつくった臨時政府で
国軍をテロリストと認定し、少数民族を味方につけ、国際社会に支援を訴えている。
(もちろん軍は、CRPHを違法組織として、リーダーたちを指名手配している)
そのCRPHが、4月1日に新しく議会を発足させるという。
この日は、クーデターがなければ、スーチーさんが新政権を発足させる日だったのだ。
市民たちは、2カ月ぶりに民主主義政権が返り咲くことを信じ、楽しみにしている。
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3月27日の国軍記念日に、市民の遺体を積み上げてすべてを終わらせ、統治を開始しようとした国軍。
その残忍な国軍相手に、CRPHも市民も、一歩も退かない。
不服従運動(CDM)を続け、CRPHへの支援を表明し、
そういう自分たちの行動をエネルギーにして、希望を生み出し続ける。
負けるな、負けるな、と祈るような気持ちで、ただそばにいる。
カレン難民の写真:https://www.taiwannews.com.tw/en/news/4163163