親日の映画監督も収監中 【ミャンマー・クーデター現地ルポ4】
3000人以上拘束の衝撃 日本に縁のある芸能人も 

  • 2021/4/12

 2月のクーデター以降の国軍の市民への弾圧の犠牲者が600人を超え、泥沼化しているミャンマー。死者の数や国軍の市民の虐待など凄惨なビデオが注目を集めるが、その裏で約2900人が今も拘束されている。アウンサンスーチー国家顧問ら政府高官も含まれる一方で、多くはデモの参加者ら一般市民だ。そんな中には、日本と縁の深い人物も多い。その一端を紹介したい。

2019年、映画の製作発表イベントでアウンサンスーチー氏(中央)に、日本人キャストについて説明するルミン氏(その右)(2019年、筆者撮影)

歴史映画で日本との絆描く
 2月20日にストを呼びかけ、刑法の規定に抵触するとして逮捕されたのは、映画監督や俳優として知られるルミン氏だ。同氏はクーデターが起こると、知人の映画スターらを引き連れて街頭でデモや座り込みを敢行。公務員らによるゼネスト「市民不服従運動(CDM)」への参加を呼び掛けた。逮捕前の最後にアップした動画では、国軍の弾圧の犠牲者を悼んだうえで、「我々は暴力を用いない。怒りをコントロールしよう」と呼び掛けていた。
 ルミン氏は昨年来、ミャンマー独立の英雄でアウンサンスーチー氏の父でもあるアウンサン将軍の歴史映画を撮影していた。しかし昨年の新型コロナウイルス感染拡大の影響で公開が遅れたことに加え、その後クーデターが起きたため公開は絶望的とみられている。
 アウンサン将軍は、日本軍の鈴木敬司大佐らの軍事訓練を受けたのちに英国と戦い日本占領下のビルマ国で国防相に就任、その後日本軍に反旗を翻したのち暗殺されるという数奇な人生を生きている。ルミン監督は映画の製作発表イベントで「真摯に独立を追い求めたアウンサン将軍と鈴木大佐の縁を描きたい」として、ビルマと日本との絆を表現したいという意向を示していた。撮影では20人以上の日本人の俳優やエキストラを起用して、リアリティを出そうと腐心していたところだった。鈴木大佐がアウンサン将軍らに対して、「本当に独立したいのなら俺を殺せ」などと叫んだとされる史実を、映画の主要なシーンに据えたいと考えていたという。

アニメ「ポケットモンスター」の放送記念イベントで、ピカチュウと一緒に登壇するパインタコン氏(2019年、ヤンゴン編集プロダクション提供)

ピカチュウと共演のイケメン俳優も逮捕
 また、日本でもツイッターなどで一時「イケメン俳優」として名をはせたパインタコン氏も逮捕されている。同氏は、デモ隊を最前線で盾などを持って守る組織に参加して、自ら現場に出ることでデモ隊を鼓舞していた。最近は体調不良で休養していたようだが、4月8日早朝に約50人の部隊が自宅を急襲し、逮捕された。このパインタコン氏は、アニメ「ポケットモンスター」がミャンマーで放映される際のイベントで、ピカチュウの着ぐるみと一緒に壇上に立つなど、日本ともゆかりがある。
 そのほか、逮捕されていないものの、訴追され指名手配されている俳優やインフルエンサーもすでに百数十人に上っている。国軍側は4月上旬から国営テレビなどで毎日20人ずつ指名手配者を公表している。手配された有名人の中には、青山学院大卒の人気歌手のマリー氏、無料で葬儀を行う慈善活動家としても有名で、日本語の刺青を入れているベテラン俳優で映画監督のチョートゥー氏、日本映画ファンとして知られる若手映画監督のトゥーパインゾーウー氏なども含まれている。

無料で葬儀を行う慈善活動で知られるチョートゥー氏は、日本の霊きゅう車を使用している。右手には日本語の刺青がある(2018年、筆者撮影)

 市民団体のまとめによれば、4月9日の時点でクーデターに絡んで拘束されているのは、2931人にのぼる。520人に逮捕状が出ており、多くが身を隠すなどして当局に追われているという。

 

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