From Editor(2022年11月)
Newsletter vol.51(2022年11月配信)より

  • 2022/4/26

■╋■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
╋■┛   Newsletter  vol.51
■┛━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
      https://dotworld.press

「ドットワールド Newsletter」へご登録いただいた皆様

 出張続きで、国内のイベントに足を運べる機会がめっきり減ってしまった。オンラインで視聴できる場合は可能な限り現地から接続するようにしているものの、稀にタイミングが合って会場に駆け付けることができると、やはり嬉しい。先日、5日ほど日本にいた間に、宇田有三さんの講演会にお邪魔した。約30年にわたりミャンマー取材を続け、人々や社会を見続けてきたフォトジャーナリストだ。
 冒頭の例題に、まんまと「してやられた」。配布された紙に、(A)両端に矢羽が内向きについた水平線と、(B)両端に外向きの矢羽がついた水平線の2本が上下に並び、「AとB、どちらが長いでしょうか?」という問いと「A>B」、「A<B」、「A=B」の3つの選択肢が挙げられていたため、「あぁ、矢羽の向きによって、実際より長く見えたり短く見えたりする錯視の問題だな」と早合点。「その手には乗らないぞ」と勢いよく「A=B」を選んだら、実際にはAの水平線の方が長く引かれていたのだ。錯視に惑わされないように気を回したつもりが、実際に測ることをせず経験と思い込みで判断したため、まんまと引っかかったというわけだ。
 さらに、「山を描いてください」という指示に従って下の四角い枠線に山を2つ描いたら、「枠の中に描けとは言っていませんよ」と言われて、またもや「ぎゃふん」。実際、四角の外に山を描いた参加者は、誰もいなかった。
 「大人になると自ら手を動かすことを辞め、枠を与えられるとその中で思考するようになり、自分の培ってきた経験の中で事象を見てしまうようになるのです」
 口調こそいたって穏やかだったものの、宇田さんの言葉には強く胸を衝かれた。しがらみや制約、思惑に縛られたり左右されたりせず、できるだけ自由な感覚で情報に触れ、判断し、思いを育みたいと願っているはずなのに、気付かないうちに真逆の思考に陥っていた自分への忸怩たる思いとそら恐ろしさは、時間が経つほどに募り、帰りの新幹線ではこみ上げる感情を咀嚼するのに懸命だった。
 宇田さんには、今年2月に寄稿いただいている。昨年2月1日にミャンマーでクーデターが起きて以来、市民が「春の革命」「ミャンマーに自由を」「独裁反対」「民主主義が欲しい」などと、上空から見えるように路上に白ペンキで描いた軍への抗議メッセージをグーグルマップで1つ1つ見つけ出して場所を特定するという、気の遠くなるような地道な作業を披露いただいたのだ。ヤンゴン市内を中心に135カ所に上ったメッセージの中には、車両の往来や軍の手によってすでに消えかけているものもあった。「路上に抗議の意思を描くという非暴力の抵抗が存在していたことは、今記録しておかないと確実に消え去ってしまう」という思いに駆られた宇田さんが、文字通り自ら手を動かして集めた結果、95%以上が英語で描かれていることも分かった。「これらのメッセージの前に、果たして国際社会はこの1年間、ミャンマー軍部の暴走を抑え込めることができたのか」という問いは、今読み返しても重い。
 社会事象にはさまざまな要因が複雑に絡み合い、人間関係もその影響を否応なく受ける。理解しよう、納得しようと焦るがゆえに、自分の経験値や価値観から想像がおよぶ範囲内でのみ事象を判断してしまうことに無自覚にならないよう、手を動かし続けることを改めて誓う訪問となった。
            *
 ドットワールドは、現地から見た「世界の姿」を伝えるために、これからも力を尽くします。引き続きご支援のほど宜しくお願いいたします。

◆「社会を読み解く」の新着記事(2022年10月26日~2022年11月25日)

□■□……………………………………………………………
COP27で顕在化した古くて新しい南北問題
(在米ジャーナリスト 岩田太郎氏執筆)
■□■……………………………………………………………
 米欧を中心とする豊かな先進国と、旧植民地を中心とする貧しい途上国が、環境、経済、食糧などの面で激しく対立する場面が増える中、植民地時代の支配構造や不平等が是正されていないとして多くの途上国で反欧米感情が高まり、ロシアや中国の支持に走る悪循環が生まれています。
 古くて新しい構造的な南北問題の本質について読み解きました。
 ⇒ https://dotworld.press/us_cop27_north_south_problem/

□■□………………………………………………………………………………………………………………………………
【タイ・ミャンマー国境の不都合な真実①】写真家らが語る難民の果てなき逃避行
(保健医療専門職 西方浩美氏執筆)
■□■………………………………………………………………………………………………………………………………
 タイとミャンマー国境の窮状を訴える写真展が10月初旬から11月6日までバンコクで開かれています。
 昨年2月にクーデターが起きたミャンマーからタイに逃れてきた人々や、40年にわたり国境の難民キャンプで暮らす人々の苦しい生活を伝える写真家や人権活動家らが登壇したトークイベントを取材しました。
 ⇒ https://dotworld.press/thailand_myanmar_border_inconvenient_truth_photo_exhibition/

□■□………………………………………………………………
イランから広がる「スカーフデモ」と米国社会
(在米ジャーナリスト 岩田太郎氏執筆)
■□■………………………………………………………………
 頭髪を覆うよう女性に義務づけた法律に違反したとして、イランの首都テヘランでクルド系女性のマサ・アミニさんが道徳警察に逮捕され、その後で亡くなったことに抗議するデモが世界中に広がっています。
 イラン国外で最も多くのイラン系の人々が住むカリフォルニア州をはじめ国内各地で抗議が行われている米国の現状と、米政府の対応ぶりを通じて、米国社会における事件の意味を考えました。
 ⇒ https://dotworld.press/us_iran_hijab_protests/

□■□…………………………………………………………………………………
習近平独裁新時代」を前に世界が覚悟すべき二つのリスク
(ジャーナリスト 福島香織氏執筆)
■□■…………………………………………………………………………………
 中国・北京の人民大会堂で10月22日、中国共産党第20回全国代表大会(党大会)が開かれ、習近平国家主席の3期目の総書記続投が決定しましたが、これに伴い徹底して異論者や共青団(共産主義)派を排除する党人事が行われ、周囲を驚かせています。
 「これまでとは明らかに異なる習近平独裁新時代の幕開け」を受け、国際社会が覚悟しておくべき二つのリスクについて、中国情勢に詳しい筆者が解説しました。
 ⇒ https://dotworld.press/china_risk_xi_jinping_new_era/

◆「世界写真館」の新着写真(2022年10月26日~2022年11月25日)

□■□………………………………………………………
【Pray for Myanmar】敬う姿勢
(ビルマ語通訳、翻訳者 森本綾氏撮影)
■□■………………………………………………………
「年長者を大切にするのがミャンマーの人たち。僧侶に対しおこなうように、人生の大先輩に手を合わせ三拝し敬意を表していた。どうか無抵抗な人々に銃口を向けないで。ヤンゴン」
 ⇒ https://dotworld.press/photogallery_myanmar_respect_for_elders/

□■□……………………………………………………………
野球少年(ニカラグア)
(フォトジャーナリスト 柴田大輔氏撮影)
■□■……………………………………………………………
「サッカーのイメージが強い中南米だが、ニカラグアでは野球が盛んだ。テレビでナイター中継を見ながら暑い夜を過ごす。街角の広場で、授業を終えた子どもたちが、日没までボールを追いかけていた。」
 ⇒ https://dotworld.press/photogallery_nicaragua_baseball_kids/

□■□……………………………………………………………………………………………………………
【Pray for Myanmar】タイの学校に通うミャンマーの子供
(旅フォトグラファー 三田崇博氏撮影)
■□■……………………………………………………………………………………………………………
「タイのメーソートにはミャンマー人の通う学校があります。幼稚園から高校生までが同じ学校で学んでいます。写真の少女は生徒の一人でタイ語でかかれた制服を着ていますが、顔にはタナカを塗り、ミャンマー人であることを誇りに生きています。(2022年9月、タイで撮影)」
 ⇒ https://dotworld.press/photogallery_myanmar_child_attending_school_in_thailand/

◆「報道を読む」の新着記事(2022年10月26日~2022年11月25日)

□■□………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………
ワールドカップ、光と影
(シンガポール・Straits Times紙 2022年11月20日付社説、タイ・Bangkok Post紙 2022年11月19日付社説、ネパール・Kathmandu Post紙 2022年11月14日付社説より)
■□■………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………
 中東・アラブ地域で初の開催となったサッカー・ワールドカップのカタール大会。
 揺れ動く世界情勢の中、人権問題をめぐるさまざまな批判も噴出しているこの大会の光と影をアジアの各紙から読みました。
 ⇒ https://dotworld.press/singapore_bangladesh_thailand_nepal_worldcup2022/

□■□…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………
「南アジアの誇り」、スナク英首相の行方
(インド・Times of India紙 2022年10月25日付社説、スリランカ・Daily News紙 2022年10月26日付社説、シンガポール・Straits Times紙 2022年10月27日付社説より)
■□■…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………
 イギリスでリズ・トラス前首相が史上最短の45日で辞任したことを受け、リシ・スナク元財務相が10月24日、与党・保守党の新党首に選出され、翌25日に首相に就任しました。
 イギリス初のインド系首相の誕生を報じるアジアの社説を紹介しました。
 ⇒ https://dotworld.press/uk_new_pm_rishi-sunaks/

□■□………………………………………………………………………………………………………………………………………
プラユット首相の任期問題で憲法裁判断に揺れるタイ
(タイ・Bangkok Post紙 2022年10月1日、および10月27日付社説より)
■□■………………………………………………………………………………………………………………………………………
 タイの憲法裁判所は9月30日、プラユット首相の任期を2025年4月までとする判断を下しました。
 首相の任期をめぐっては、在任期間の上限として定められている8年をすでに終えたとする主張があり、8月24日より副首相が首相代理に就いていましたが、この判断を受けてプラユット首相は職務に復帰しています。
 この問題を2回にわたり論じた地元英字紙の社説を紹介しました。
 ⇒ https://dotworld.press/thailan_pm_still_at_crossroads/

□■□…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………
ミャンマー国軍への厳しい判断を迫られるASEAN
(シンガポール・Straits Times紙 2022年11月1日付社説、タイ・Bangkok Post紙 2022年11月8日付オピニオン記事、カンボジア・Khmer Times紙 2022年11月9日付社説より)
■□■…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………
 東南アジア諸国連合(ASEAN)の首脳会合がカンボジアの首都プノンペンで11月11日から3日間にわたり開かれています。
 主要な議題の1つであるミャンマー情勢について、会議に先立ち掲載されたシンガポール、タイ、そしてカンボジアの社説およびオピニオン記事を紹介しました。
 ⇒ https://dotworld.press/asean_needs_to_take_hard_decisions_toward_myanmar/

□■□……………………………………………………………………………………………………
フン・マネット氏、フン・セン首相「後継者」への道
(カンボジア・クメールタイムズ紙 2022年9月20~22日付社説より)
■□■……………………………………………………………………………………………………
 来年7月に総選挙を迎えるカンボジア。
 1993年以来、30年にわたり国の指導者を務めているフン・セン首相は、来年の総選挙にも出馬する意向を示す一方、長男のフン・マネット陸軍司令官を後継者に指名しています。
 フン・マネット氏がいかに次期首相にふさわしいかを3日にわたり論じた地元英字紙の社説を通じ、フン・セン首相の意図を読みました。
 ⇒ https://dotworld.press/cambodia_hun_manet/

□■□…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………
ロシアによるウクライナ侵攻が招いた物価高
(バングラデシュ・Daily Star紙 2022年10月22日付社説、ネパール・Kathmandu Post紙 2022年10月18日付社説、シンガポール・Straits Times紙 2022年10月21日付社説より)
■□■…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………
 ロシアによるウクライナ侵攻は、世界各地に燃料をはじめとする生活物資の物価上昇を引き起こしています。
 戦況が収束する見通しが立たないまま人々の暮らしが追い詰められる中、政府に迅速な対応を求めるバングラデシュとネパール、シンガポールの社説を紹介しました。
 ⇒ https://dotworld.press/bangladesh_nepal_singapore_inflation/

□■□………………………………………………………………………………………………………………………………………………………
ロシアによるウクライナ4州「併合」の非難決議を採択
(タイ・Bangkok Post紙 2022年12月14日付社説、インド・Times of India紙 2022年10月4日付社説より)
■□■………………………………………………………………………………………………………………………………………………………
 国連総会は10月12日、緊急特別会合を開催。ロシアによるウクライナ4州の「併合」を非難する決議案を、加盟193カ国中、賛成143カ国の圧倒的多数で採択しました。
 他方、ロシア、ベラルーシなど5カ国が反対。中国やインドなど35カ国が棄権しました。
 棄権したタイとインドの英字紙の社説を紹介しました。
 ⇒ https://dotworld.press/russias_illegal_referendum_in_ukraine_quiet_or_loud_diplomacy/

╋■┛ 新着記事はSNSで随時ご紹介しています。フォローお願いします ╋■┛

Facebook  :@dotworld.press
Twitter    :@dotworld_press
Instagram  :@dotworld.press

◆◇◆◇━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━―…‥・・
【ドットワールド Newsletter】
 このメールは、メールマガジンをご登録いただいた方にお送りしています。
 以下のアドレス宛に、ご意見、ご感想をお寄せいただければ幸いです。
 また、配信停止をご希望される方も、メールアドレスと配信停止の旨をご記載の上、こちらまでご連絡ください 。
 newsletter@dotworld.press

*情報反映のタイミングにより、配信解除のお手続き後もメールが配信される場合がございます。
 あらかじめご了承ください。

 

関連記事

ランキング

  1.  2024年1月13日に行われた台湾総統選では、与党民進党の頼清徳候補(現副総統)が得票率40%で当…
  2.  突然、電話がかかってきたかと思えば、中国語で「こちらは中国大使館です。あなたの口座が違法資金洗浄に…
  3.  最後の音が鳴り響いて消えると、わずかな間を置いて、客席から熱い拍手が湧き起こった。ステージ上では、…

ピックアップ記事

  1.  2024年1月13日に行われた台湾総統選では、与党民進党の頼清徳候補(現副総統)が得票率40%で当…
  2.  突然、電話がかかってきたかと思えば、中国語で「こちらは中国大使館です。あなたの口座が違法資金洗浄に…
  3.  最後の音が鳴り響いて消えると、わずかな間を置いて、客席から熱い拍手が湧き起こった。ステージ上では、…
ページ上部へ戻る