インドで「世界最大の総選挙」、10億人の選択は?
熱波や白票を乗り越えて、モディ首相の3期目なるか
- 2024/6/2
インドで4月19日、「世界最大の総選挙」が始まった。下院議会の545議席のうち、大統領が指名する2議席を除く543議席が、小選挙区制で争われる。有権者の数は、約9億7000万人にのぼり、投票所は100万カ所以上、設置されたという。投票は6月1日まで7回に分けて実施され、開票は6月4日に一斉に行われる。選挙が民主的に実施されるか、また国際的にも存在感を増すモディ現首相が初の3期目に入り、政権基盤を固めるかどうか、などが注目されている。
「投票は熱波との闘い」
インドの英字メディア、タイムズ・オブ・インディアは、この長く、壮大な総選挙をさまざまな角度から論じている。
4月24日付の社説では、2回目の投票日である4月26日に投票が行われた約30の選挙区について、気温と投票の関係に着目した。
社説は、「2回目の投票で争われる89議席のうち、3分の1にあたる約30の選挙区が熱波に見舞われる可能性がある」と指摘した。1回目の投票日であった4月19日の投票率が前回よりも低かったため、政府は「暑さ対策」を強化しているという。
社説は、「暑さ」は有権者の投票への意欲を奪うだけでなく、電子投票の機械を故障させたり、候補者や党員たちの健康を害したりする恐れもあると指摘する。また、一部の州では、あまりの暑さに、選挙そのものへの関心が低下しているとも言われる。1カ月半にわたる投票期間中、「熱波が消極的な有権者をとどまらせるのではないか」と、社説は懸念を示している。
「NOTA」が示す民意
一方、電子投票機にある「白票」ボタン、NOTAの役割に注目したのは、4月24日付のタイムズ・オブ・インディアだ。
NOTAは、「上記の候補者に該当なし(None of the above)」という意味で、候補者の名前が並ぶ電子投票機の一番下に、このNOTAボタンがある。以前は、白票を投じる場合は選挙管理委員会に申し出る必要があり、それでは投票の秘密が守られない、と問題視されていた。
タイムズ・オブ・インディアは、「NOTAの力」と題した社説で、NOTAが設けられた経緯などを紹介し、NOTAがどのような投票行動であるかを論じた。社説によれば、NOTAの廃止を望む人たちもいるという。というのも、接戦で票が割れた場合、NOTAが最高得票になることもあり、その場合には再選挙をしなくてはならないからだ。
しかし社説は、NOTAによって示される意思は、「強力なシグナル」だと主張。「多くの有権者が現状に不満を表明するということは、変化を求めているということだ」と、NOTAの意義を評価した。
インドと対立するパキスタンの視点
インドの巨大な総選挙を、隣国パキスタンはどう見ているのだろうか。パキスタンの英字紙ドーンは4月21日付の社説でインドの総選挙を論じた。
社説は今回の選挙における有権者の関心事として、失業、インフレ、経済的失望感があると指摘。盤石とも見られるモディ政権に対し、「国民は必ずしも支持しているとは限らない」という論調だ。
社説によると、モディ首相率いる与党、インド人民党の女性候補者は、「今回は(以前の選挙で地滑り的勝利を引き起こした)モディの波はありません。警戒を怠らないでください」と支持者たちに呼びかけたという。また、「オンラインメディアによる独自の見解や、代替メディアによる報道は、モディ首相に好意的なテレビ報道とは食い違っており、モディ首相が簡単に勝利するとは見ていない」としている。
(原文)
インド:
https://timesofindia.indiatimes.com/blogs/toi-editorials/heats-on-votes-on/
https://timesofindia.indiatimes.com/blogs/toi-editorials/power-of-nota/
パキスタン:
https://www.dawn.com/news/1828747/elections-in-india