2023年、社会は新型コロナとどう共存するのか
「ウィズコロナ」を生き抜くアジア各国の心構え
- 2023/1/5
新型コロナウィルスの感染拡大が始まって、早3年。ウィルスは変異を繰り返し、感染力や重症化のレベルを変えながら、私たち人間と共存するようになった。こうした中、アジア各紙の社説では、観光業やワクチン接種など、「ウィズコロナ」の社会を生き抜くための工夫について、議論している。
シンガポール:コロナ禍で観光業にもたらされた希望
シンガポールの英字紙ストレーツタイムズは、12月22日付の社説で「パンデミックの収束とともに観光客が戻ってきた」と題する記事を掲載した。
社説によると、2022年11月のシンガポールへの訪問客は81万6,000人を超え、同年1月の5万7,000人から大きく伸びた。11月までの訪問者の合計数は537万人に上り、シンガポール観光局が目標に掲げていた年間400万人から600万人という数字を達成することができた。新しいホテルも9カ所以上建設されるという。しかし、コロナ禍前の2019年は訪問者数が1,910万人だったことと比べれば、まだ順調に回復したとは言い難い、と社説は述べる。またロシアによるウクライナ侵攻によって欧米諸国からの観光客が減少する可能性をはじめ、懸念材料もあると指摘した。
さらに社説は、「観光業界は、エネルギー費用や食料品価格の高騰、人手不足などの厳しい問題に引き続き直面するだろう」との見方を示したうえで、「しかし、このコロナ禍がもたらした希望もある」として、こう述べる。
「コロナ禍によってもたらされた希望とは、シンガポールの観光業界がどのような外国人客をターゲットにするべきか、熟慮する機会を与えてくれたことだ。来訪者数を増やすことだけが、必ずしもゴールではない。必要なのは、シンガポールでの滞在に、より価値を見出してくれる観光客を招くことだ。そうすれば、たとえ来訪者数が2,000万人を下回ったとしても、観光収入がコロナ禍前を上回ることも十分に考えられる」
社説は、「観光業界の今後の見通しは、決して暗いものではない」と言う。ただし、長期的な成長を期待するのであれば、ホテルのオーナーたちはサービスや設備の質を向上させ、たとえ宿泊費が高額であっても多くの客を呼べるように工夫しなくてはならない、と指摘している。
フィリピン:ワクチン疲れを吹き飛ばせ
一方、「新型コロナはまだ終わっていない」という社説を掲載したのは、12月18日付のフィリピンの英字紙デイリー・インクワイアラーだ。
社説によれば、2019年12月31日に世界保健機関(WHO)が初めて新型コロナについて報告をしてから、世界中で命を落とした人は、666万人に上る。「WHOは、2023年が世界的な公衆衛生の緊急事態ではなくなることを望んでいる。そのためにはより多くの取り組みが必要だ」と言う社説が特に重視するのは、ワクチン接種率の向上だ。
フィリピンのワクチン接種率は、決して高くない。フィリピン保健省によると、ワクチン接種を2回終えた人は12月13日時点で7,370万人に上るが、3回目のブースター接種を受けた人はそのうち28%、210万人に過ぎない。これは、全人口のわずか19%にとどまる。
社説は、米国でも同様にブースター接種率は13.5%と低率であるという事実を指摘し、「コロナ疲れ、ワクチン疲れ」だと述べた。コロナ禍が長引くにつれ、人々は予防のためにあれこれ指示されることにも、ワクチンを受けることにも疲れ切ってしまったというのだ。
しかし、日本を含む多くの国で、感染者は増加している。フィリピンでも、新規感染者は再び増え始めているという。
「フィリピンのように保健システムが脆弱な国では、予防こそが最善の対策だ。引き続き、予防に努めなくてはならない。ワクチンを接種し、マスクを着用し、年末年始であっても油断をせずに、感染予防対策をしよう。新型コロナはまだ終わっていない」
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2023年、世界は新型コロナとどう共存していくのか。2つの記事はそれぞれ別の切り口から書かれているが、どちらも「ウィズコロナ」の社会を想定している。過度に恐れて縮こまるのではなく、この苦しかった3年で得た経験と知識を活用し、適切な対策をして、前進しようと呼びかけているようだ。
(原文)
シンガポール:
https://www.straitstimes.com/opinion/st-editorial/tourists-return-as-pandemic-ebbs
フィリピン: