ロシアによるウクライナ侵攻が招いた物価高
追い詰められる人々のくらしと批判高まる政府の対応を伝えるアジアの社説を読む

  • 2022/11/7

 ロシアによるウクライナ侵攻は、世界各地に燃料をはじめとする生活物資の物価上昇を引き起こしている。戦況は収束への道筋が見えないままで、物価上昇はまだしばらく続くとみられている。

(c) Jack Prichett / Unsplash

ガス危機に直面するバングラデシュ

  バングラデシュの新聞には、「ガス危機」と掲げた記事が相次いで掲載されている。同国の英字紙デイリースターは、1022日付の社説でこの問題を取り上げ、「急激なガス危機は全ての人を苦しめる」と、指摘した。

 社説と同紙の記事によると、バングラデシュでは、主要な燃料であるガスが今年の7月ごろから急激に不足し始め、現在は一部供給を止める事態に陥っている。液体天然ガスの国際価格が高騰し、政府が購入を止めたためだと社説は指摘する。

 「たとえば1016日に政府のペトロバングラ社が供給できたガス量は、1日に約2,621万立方フィート(mmcf)だったが、需要はそれを上回る3,760mmcfに上った。つまり、毎日平均1,000mmcf前後のガスの供給量が不足している状態が続いている」

 さらに社説は、ガス不足の影響について、「ここ2カ月ほど、毎日朝8時から夜7時までガスが止まるため、私は毎朝5時に起きて、ガスが止まるまえに食事の支度を済ませなければならない」というダッカ在住の女性のコメントを紹介している。また、バングラデシュの陶器工業協会では、燃料不足のために生産量が10%から30%近く落ち、注文をキャンセルする事例も多発しているという。車両燃料のCNGスタンドでは、1日5時間にわたり閉鎖を強いられるところもある。また、国内ガスの42%を消費する発電所でも送電を1日6時間以上の停止することが必要になっているという。

 このような状況を伝えたうえで、社説は、ガスの価格高騰の原因となっている国際的な事象に対して、政府が何ら対策を取れていない、と強く批判する。「ロシア・ウクライナ戦争に起因する価格の高騰と供給の混乱は、政府が輸入ガスに過度に依存することなく、エネルギー源を多様化していれば緩和できたはずだ。政府は、国民の苦しみを和らげるための対策を今すぐ打たなければならない」

 ネパールでも燃料価格が高騰

 ネパールも、原油価格の高騰の影響を受けている。ネパールの英字紙カトマンドゥポストは、1018日付の社説でこの問題を採り上げた。

 社説は、原油価格が国際的には1バレル90ドルにまで落ち着いたにもかかわらず、ネパール政府が保有する燃料会社が燃料価格を依然として引き下げないことを批判した。会社側は、「これまでの損失を補うためには、現状価格の維持が必要だ」と、主張しているという。

 社説は、「食料や他の生活必需品の価格高騰は、世界各地の政治指導者にとって最も重要な課題だ」としたうえで、「これは特に貧困国にとって厳しい課題だ」と指摘した。

インフレと闘うシンガポール

 シンガポールの英字紙ストレーツタイムズは、1021日付で「インフレーションとの闘いから学ぶこと」と題した社説を掲載した。

 社説は、各国政府が「価格の上昇を抑制するための対策と、国民をその影響から守るための対策」に追われているとして、「ほとんどの中央銀行は金利を引き上げることでインフレを抑制しようとしているが、食料や燃料の価格高騰をはじめ、今回のインフレは供給サイドの事情によるものであり、金利を引き上げても、効果は限定的か、悪くすれば経済の減速を招きかねない。実際、多くの中央銀行が金利を引き上げているにもかかわらず、インフレ傾向は収まる気配がない」と、指摘した。

 また、補助金による価格コントロールも限界がある、と指摘する。例えばインドネシアは9月に補助金付き燃料価格を約3割引き上げた。これは、燃料補助金の削減を目的とした値上げだったが、国民の反発を招いた。また、マレーシアは2月、食料価格の高騰を受けて鶏肉の上限額を設けて市場価格との差を政府が補填する政策を打ち出したが、財政負担が大きすぎて撤回せざるを得なかったという。

 社説は、シンガポール政府が打ち出した支援政策について、これらの海外の事例と比べれば「抜け目のない」ものだ、と評する。対象を低中所得者層に限定していることも、背景にある。社説は、「さらに多くの支援政策が必要になるかもしれない。しかし、我々の経験から分かるように、支援策は緻密に対象と期間を限定したうえで実施されなければならない」と、している。

 

(原文)

シンガポール:https://www.straitstimes.com/opinion/st-editorial/lessons-from-the-battle-against-inflation

 

ネパール・https://kathmandupost.com/editorial/2022/10/18/squeezing-the-public

 

バングラデシュ:https://www.thedailystar.net/opinion/editorial/news/acute-gas-crisis-hurting-everyone-3148576

関連記事

ランキング

  1.  「ミャンマーを忘れないで」。10月8日、タイのバンコク芸術文化センターの一角に、若きミャンマー人の…
  2.  16の州から成る連邦制をとるドイツには地域ごとに独自の歴史と文化があり、異なる行政体の下でそれぞれ…
  3.  昨年2月のミャンマーの軍事クーデター後に抗議活動に参加して当局に追われる身となり、現在も国境地帯に…

ピックアップ記事

  1.  「ミャンマーを忘れないで」。10月8日、タイのバンコク芸術文化センターの一角に、若きミャンマー人の…
  2.  16の州から成る連邦制をとるドイツには地域ごとに独自の歴史と文化があり、異なる行政体の下でそれぞれ…
  3.  昨年2月のミャンマーの軍事クーデター後に抗議活動に参加して当局に追われる身となり、現在も国境地帯に…
ページ上部へ戻る