ケニア農業の現在地とこれから
現場主義の先に「巨人」がみたもの

  • 2019/10/31

立ちはだかる課題

 しかし、前出のティモシー氏は「収量を倍増させたとしても、零細農家にとっては売り先を見つけることの方が難しい」と、指摘する。農作物を販売するために必要な資金や収量、タイミングが農家によって大きく異なるため、売り先を確保し続けなければ生産体制自体が支障をきたす場合もあるためだ。作物を収穫したはいいが、出口戦略がなければ商品は余り、腐り、農家にとっては大損となる。

 「大規模農場を経営するプロの農家に市場を見つける手助けをする必要はありません。サポートを必要としているのは、これまで専門的に農業を営んだ経験のない零細農家です。私たちは彼らをトレーニングし、彼らの作物の販売先を一緒に探しています。これも、私たちの重要な職務なのです」

 ケニアでは近年、乾燥地農業が期待を集めている。しかしティモシー氏は、農家だけで乾燥地農業を成功させるのは不可能だと考えている。溜池を造成したり、水を散布する設備を設置したりするには、民間企業やNGOによる支援が欠かせないからだ。だからこそアミラン社は、効率的な水マネジメント法を農家に教え、天水に依存しない農業を支援しているという。さらに同社は、生産販売に関わるトレーニングも積極的に継続しており、農家から厚い信頼を得ている。

アミラン社が農家に対して実施するトレーニング風景の様子 (c) Amiran Kenya

 ティモシー氏はまた、ケニア農業が直面するリスクとして、気候変動と、それに伴う降水パターンの変化を挙げる。実際、農家は近年、不規則な降水に苦しんでおり、天水に依存している大半の零細農家にとっては、文字通り死活問題となっている。収量が大きく落ち込む農家が続出し、農業を諦め、生きる術を失う農家も表れており、早急な対策が求められている。

 さらに、大きなシェアを占めているアミラン社だが、安価な中国製品にいかに対抗するかという課題に直面している。多くの農家にとって価格は最大の関心事項であり、たとえコストパフォーマンスが低い製品でも、安価ならつい手を出してしまう傾向がある。

 「価格競争に勝つため、アミラン社はSNSをはじめ、ラジオやテレビを通じて、適切な品質の製品を使うことの重要性を伝え続けています。また、すでに信頼を得ている自社ブランドもあるので、それらを柱に活発なマーケティングから更なる信頼を得ようと考えています」と、ティモシー氏は言う。

 その点、アミラン社は、どれだけ安価な競合品が市場に入ってきても、すでにブランドを確立しており、信用を得ている点が強みだと言える。商品を売るだけにとどまらず、課題を解決するために農家と共に現場を歩いて培ってきた年月を覆すことは容易ではない。これまでの地道な営業活動が、今日の強固な信頼基盤となっているのだ。

 だからこそ、ティモシー氏はアミラン社の将来について楽観的だ。最近、同社はバイオガス事業にも着手した。ゴミから燃料を作り、ゆくゆくは有機農業を普及するという構想を抱くティモシー氏は、次のように語る。

 「多くの人々が、できるだけ化学薬品の量を抑えた安全な農作物を望んでおり、有機農法には大変期待しています。今は有機農法という言葉すら知らない農家の方が大半ですが、それでも、有機農法に賛同する農家もすでに現れつつあります。私たちは、ケニア農業を舞台にしてさまざまなことができます。ケニアの農家の方々と、一つ一つ実現させていくつもりです」

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