ケニア農業の現在地とこれから
現場主義の先に「巨人」がみたもの

  • 2019/10/31

個人商店が一大企業へ

 独立前夜の1963年、英国資本の小さな個人商店がケニアで静かに歩き始めた。以来、農家の抱える課題を解決するため、半世紀以上にわたり現場主義を貫いてきた同社の名は、アミラン(Amiran Kenya)。いまや社員600人を擁し、ケニアのみならず、東アフリカ地域にその名をとどろかせる一大農業商社だ。長年の経験と信頼に下支えされ、ケニアで最も農業市場を熟知する企業の一つとして知られると同時に、アフリカ全土、そしてイスラエルへと果敢に進出している。

 製品開発や技術革新を率いるシニア農学士のティモシー・ムニョウォキ氏によれば、同社は創業当時、ビニールハウス事業を営んでいたが、その後、年を追うごとに事業を拡大させ、肥料や種子、殺虫剤、点滴灌漑などの分野でも大きなシェアを占めるようになり、最近はバイオガス事業にも乗り出している。

アミラン社で製品開発と技術革新を率いるティモシー・ムニョウォキ氏(筆者撮影)

 「アミラン社は、包括的なソリューションを提供することに力を入れており、農家の方たちがほしいと思うものはすべて提供してきました。現場の実証実験で効果が証明された最高品質の製品を提供することで農業に関わるリスクを下げ、収量を最大化することを目指しています」と、ティモシー氏は胸を張る。

 アミラン社は、ケニア政府が掲げる「製造業の強化」、「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)」(誰も基本的医療サービスを利用できること)、「誰もが購入可能な住宅」と並び、四大政策の一つとして掲げる「食の安全保障」にも、密接に関わっている。ケニアをはじめ東アフリカ諸国では、降水量が低下して干ばつが起こり、飢餓につながるという負のサイクルが地域の共通課題であり、そのたびに、海外からの緊急支援や食糧輸入で対症療法的に危機をしのいでいるのが現状である。アミラン社は、最新技術によって農作物の生産性を向上し、輸入に頼らなくてすむ十分な食料をケニア国内で生産できるようにするという重大な責務を背負っているのだ。

アミラン社が展開する事業分野。農業を振興するために包括的なサービスを提供するのが、同社の目標だ (c)Amiran Kenya

 世界銀行が2015年に公開した報告書「ケニアの農業部門におけるリスク評価」は、農業が同国のGDPの4分の1を占め、農村部門の雇用の7割を創出し、輸出額の65%を占め、外貨取得の6割を担う基幹産業であると指摘した上で、ケニアが経済成長と食の安全保障、そして貧困削減を実現するためには、農業の発展が欠かせないと結論付けている。

 その一方で、零細農家の多さや、天水(自然に降る雨水)に依存する農業スタイル、そして貧困率の高さなどによって、ケニアの農産業が気候変動の影響を受けやすく、外部ショックに脆弱であるとも指摘している。

 アミラン社は、こうした脆弱性を排し、農家が自立した生産を行えるようになるため、点滴灌漑の普及やハイブリッド種の導入、良質な肥料の使用を促進している。収量を倍増し、輸入に頼らずともケニアの食糧を国内でまかなえるようにすることが目標だ。

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