すべての子どもに朝食を
日本の給食がヒント、マレーシアの挑戦

  • 2019/9/6

 マレーシア教育省は、来年度からすべての公立小学校で朝食を提供することを決めた。マレーシアの英字紙「ザ・スター」は、その決定を「善意に基づくもの」としながらも、効果的な実施にはさまざまな課題がある、と指摘している。

日本では「市民意識」まで教える

 マレーシア教育省が提唱するProgram Sarapan Percuma (PSP:無料朝食プログラム)は、マハティール首相が日本で視察した「給食」に触発されて生まれたという。社説は「日本の子どもたちは給食で栄養価の高い食事を摂るだけでなく、一市民としての高い意識も学ぶ」と指摘する。ここで言う「市民としての意識」とは、健康な生活を送るための正しい食習慣や、食事の前に手を洗うこと、そして食事の後に皿を洗うことを指している。

マレーシアが提唱する朝食プログラムは日本の給食がモデルになっている (c) kamenさん/写真AC

 しかし社説は、こうした考え方を評価する一方で、「教育省は次年度からの導入を目指しているようだが、すでに9月に入っており、新学期が始まる1月までに準備ができるのか」と、指摘する。

 準備というのは、例えば栄養バランスの良いメニューを開発したり、6月に始まった貧困家庭の子ども向け朝食プログラム――毎朝、無料で果物と豆乳を提供する――と整合性を取ったりすることだ。さらに、給食プログラムを望まない保護者がいたらどう対処するのかや、給食を食べる場所は教室か食堂か、など課題は多いと社説は指摘する。

 教育省は特別委員会を設けてこうした課題に取り組み、PSPの準備を進めているが、専門家の中にはこのプログラムの「持続性」を疑問視する者もいるという。「こうした試みは初めてではないが、その多くは運営がお粗末で、資金の使われ方も適切でなかったため失敗に終わっている」

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