子どもの家事労働、虐待のえじきに
家庭という「死角」で起きる悲劇にバングラデシュの英字紙が警鐘
- 2021/7/26
途上国では、児童労働が今も続いている。働くことを強いられるのは、多くの場合、貧困家庭の子どもたちだ。7月20日のバングラデシュの英字紙デイリースターは、社説でこの問題を採り上げた。
繰り返される児童への暴力
「家事労働をしていた少女への雇い主による虐待がまた報じられた」。社説はこのように書き出し、痛ましい虐待の内容を次のように報じる。
「今回、容疑者である弁護士とその夫が拘留されて尋問されたことは不幸中の幸いだったが、その残虐さは衝撃的なものだった。警察によれば、少女は顔をはじめ、身体のあちこちにあざがあり、尻にはやけどもしていた。法を司る弁護士が憎むべきやり方でこのように法律に違反したという事実は、いかに社会で尊敬されている人々であっても虐待の容疑者になり得るということを示している」
バングラデシュに限らず、途上国ではしばしば未成年を家庭内の家事労働者として雇うケースがある。しかし、そもそも児童労働は国際的に禁じられている行為であり、家事労働は家庭内の仕事であるため、長時間労働や暴力など、外部から見えない部分で問題が起きやすい。
社説は、バングラデシュの児童労働の実態について、次のように説明する。
「家事労働をする子どもの多くは、6歳から17歳の未成年の少女たちである。彼女たちは農村部から直接、都市部にやってきて、見知らぬ土地で働き始める。両親は、貧しさから、口減らしのために子どもたちを働きに出すのだ」
自殺に追い込まれたケースも
児童労働と虐待の問題の一つは、容疑者がきちんと罰せられないことだ。
「少女たちが大変な危険にさらされている一方、危害を加えた者たちは、多くの場合、罰を逃れている。ある調査によると、2008年から2011年の間に家事労働者に対する暴力事件が2709件報告され、うち729件は未成年の家事労働者が殺害された。未成年の家事労働者の労働環境について調査提言するバングラデシュのシシュ・アドヒカ・フォーラムによれば、非人道的な労働時間を強いられたり、休憩がなく常に暴力にさらされたり、性的暴行や虐待を受けたりした結果、自殺に追い込まれたケースもあるという」
家庭という社会の「死角」で起きる犯罪。社説は、「拷問は、身体への暴力だけでなく、給料の未払いや暴言など、経済的、精神的に苦痛を与えることによっても起こり得る」と指摘した上で、「いずれも、れっきとした犯罪行為だ」と断言する。「貧しさゆえに家事労働に送り込まれた子どもたちは、守ってくれる人がいないため、雇い主の慈悲に頼るほかない。しかし、未成年の家事労働は違法だと認識されなければならない」
権力も金銭も握っている雇い主による一方的な拷問の一端が明らかになった弁護士夫妻の事件が法の下にきちんと裁かれるとともに、子どもたちをこのような残酷な事件の犠牲者にしないために、貧困家庭の収入向上を含め、問題解決のための抜本的な施策が望まれる。
(原文https://www.thedailystar.net/views/editorial/news/child-domestic-workers-continue-fall-prey-abusers-2134061)