「コロナ疲れ」がまん延するマレーシア
抑え込んでいた感染の拡大傾向に地元紙が危機感

  • 2020/12/9

新型コロナウイルスの累計感染者が6万人を超えたマレーシア。しかし、欧米諸国などと比べ合計数が少ないことなどから、国内では安堵の空気が漂っているという。11月27日付のマレーシアの英字紙ニューストレイツタイムズは社説でこの問題をとりあげ、油断をしないよう呼び掛けている。

マレーシアで「コロナ疲れ」のまん延が懸念されている (c) Kelly Sikkema / Unsplash

割れる専門家の意見

 11月末までのマレーシア国内の新型コロナ感染者数は6万4,485人。1300万人を超えたアメリカ、900万人以上のインドなどと比べればかなり少なく、抑制に成功している方だと言われる。しかし、こうした楽観的な見方に対し、社説は次のように厳しく指摘する。

 「安堵から気が緩み、マレーシアの新規感染者数が今なお多いという真実が見えなくなっている」「感染が拡大し続ける国、例えば一日に2000人以上が亡くなっている米国に比べれば、新規感染者数が一日あたり2000人という数字はたいしたことがないように思えるかもしれない。しかし、11月10日に終わる予定だった条件付き活動制限令(CMCO)は延期された。なにより、活動を制限しても感染者数が減らなかったことを見逃してはならない」

 マレーシアの一日の新規感染者を見てみると、11月24日に2188人を記録し、2000人を超えたものの、それまではおおむね1000人台で推移していた。それでも8月までは新規感染者数が多くても30人台だったことを鑑みると、9月以降、感染増加の波が押し寄せているのは明らかだ。

 抑制に成功したように見えてはぶり返す。先の見えないコロナとの長い闘いに、社説はいらだつように吐き出す。

 「ワクチンが入手できるのは早くても来年の第一四半期になると言われており、黙ってワクチンを待つだけでなく、感染者を減らすための戦略が必要だ、との声がある。より厳しく活動を制限すべきだと主張する専門家もいれば、それは経済を悪化させると反対する専門家もおり、意見は割れている」「少し前まで、マレーシアは他国に先駆け活動制限に踏み切ったために新型コロナの感染拡大の抑制に成功したと世界の医療コミュニティーから称賛された。とはいえ、活動制限によって経済が負う傷は深く、2020年末までに10万人が職を失うとの見方もある。専門家たちは、何か新しい対策が必要だと言うばかりで、目新しい提案も、納得できる提言もない」

新しい対策とは何か

 あらゆる手を尽くした、我慢もした、けれど感染者は増える一方で、一体どうすればいいと言うのか-。社説は「コロナ疲れ」とでも言うべき焦りをにじませた上で、「今後、ワクチンや特効薬が開発されても新型コロナが絶滅するわけではない」と指摘し、次のように問いかける。

 「デング熱、HIV/AIDS、鳥インフルエンザなど、私たちは現在、さまざまな病と共存している。同様に、新型コロナウイルスもこれから私たちの生活の一部となるだろう。専門家ですら明快な答えが見つけられない中、私たちはどのようにして新しい対策を見つけたらいいのか」

 その上で社説は、「仮に世界各国で実施されているさまざまな規則や対策をすべて採り入れたとしても、国民がそれに従わなければ何の意味もない」と指摘し、こう述べる。

 「私たちに必要なことは、新型コロナ対策など気にしない、と軽く考えている人たちに感染予防を徹底し、従わなければ罰則を科すなど強制力を持たせることではないか。コロナを打ち負かすために最も重要なことは、私たち自身の姿勢を変え、すべての人が自分のすべきことに真摯に取り組むことだ」

 コロナ対策に特効薬はない。手を洗い、距離を保ち、不要不急の外出は避ける。基本の行動を一人ひとりが守れば、感染拡大は抑制できる。「新しい対策はない」というのが、この社説の答えだ。

 

(原文: https://www.nst.com.my/opinion/leaders/2020/11/644985/nst-leader-covid-19-can-be-beaten)

 

関連記事

ランキング

  1. ミャンマーで国軍が与党・国民民主同盟(NLD)を率いるアウンサンスーチー氏らを拘束し、「軍が国家の全…
  2.  ミャンマーで2021年2月にクーデターが発生して丸3年が経過しました。今も全土で数多くの戦闘が行わ…
  3.  2024年1月13日に行われた台湾総統選では、与党民進党の頼清徳候補(現副総統)が得票率40%で当…
  4.  台湾で2024年1月13日に総統選挙が行われ、親米派である蔡英文路線の継承を掲げる頼清徳氏(民進党…
  5.  突然、電話がかかってきたかと思えば、中国語で「こちらは中国大使館です。あなたの口座が違法資金洗浄に…

ピックアップ記事

  1. ミャンマーで国軍が与党・国民民主同盟(NLD)を率いるアウンサンスーチー氏らを拘束し、「軍が国家の全…
  2.  フィリピン中部、ボホール島。自然豊かなリゾート地として注目を集めるこの島に、『バビタの家』という看…
  3.  中国で、中央政府の管理監督を受ける中央企業に対して「新疆大開発」とも言うべき大規模な投資の指示が出…
ページ上部へ戻る