パキスタンの国境地帯で相次ぐ地雷の被害
地元紙がオタワ対人地雷禁止条約の批准と除去の推進を訴え
- 2021/7/12
地上や地中に設置され、人や車両が接近したり接触したりすることで爆発する地雷。ひとたび設置されると半永久的に存在し続け、多くの犠牲者を出し続ける。世界で最も深刻な地雷汚染国の一つであるアフガニスタンと隣接するパキスタンでも、被害は続いている。パキスタンの英字紙ドーンは、6月27日付の社説でこの問題を採り上げた。
埋設が多いアフガニスタン国境地帯
世界の国々の中でも、アフガニスタン、アンゴラ、カンボジアは地雷や不発弾の被害が特に深刻だと言われている。パキスタンはそのアフガニスタンと国境を接しており、国境地帯では紛争や武力衝突もたびたび起きている。
「地雷は、軍隊や武将勢力、政府、反政府勢力によって、数十年にわたり使用されてきた。無差別に人間を殺害したり負傷させたりし、埋設地を使用できなくして生活の糧を奪う恐るべき兵器である。アフガニスタン、カンボジア、アンゴラは世界最悪の地雷汚染国と言われるが、1979年のソビエト・アフガン戦争が始まった頃からパキスタン国境にも地雷が埋設され、人々を傷つけ、命を奪ってきた。幼い子どもたちは、地雷と分からず光る金属で遊びたがるため、特に危険だ」
社説によれば、法律家団体がパキスタン北西部の南ワジリスタン地域で地雷被害の補償を求めて起こした訴えには、このような背景がある。
1日に3回の爆発も
社説によれば、南ワジリスタン地域では、過去数年間に178回の地雷爆発があり、800人が亡くなり、250人が身体に障害を負った。さらに、少なくとも4000頭の牛が死んだという。「たとえば5月28日の1日だけで3回の地雷爆発が起き、子どもや守衛ら15人が命を落とした。国際連合児童基金(UNICEF)は、地雷の除去と啓発の重要性を訴えている」
さらに社説は、国際赤十字の報告書を引用し、「この50年間、世界で毎月2000人が地雷で亡くなっている」「地雷による死者と負傷者の人数は、核や化学兵器により亡くなった人数を上回る」と述べる。
「地雷は、ひとたび埋設されれば、何も知らない人が踏みつけたり触ったりするその瞬間まで何十年も存在し続ける。パキスタンの状況は、アフガニスタンやカンボジア、アンゴラほどひどくはないかもしれないが、それでも国境地帯ではしばしば地雷被害が報告されており、注意を向ける必要がある」
また社説は、対人地雷の使用、貯蔵、生産、移譲を禁止し、現存する地雷を廃棄するための「オタワ対人地雷禁止条約」を批准していない国が33カ国あり、パキスタンもその一つであると指摘し、地雷除去に向けた迅速な行動を求めている。
内戦の記憶が薄れつつあるカンボジアでも、地雷の被害は続いている。撤去するためには地道な努力を続けるよりほかないが、撤去作業によって命を落とす人も多い。しかも、その作業を担うのは、埋設した人々ではなく、そこに住む人々だ。負の遺産を地球から廃絶するために、新たな地雷はただの一つも増やしてはならない。
(原文:https://www.dawn.com/news/1631747/landmines-in-ex-fata)