マレーシアが首都と5州をロックダウン
地元紙が「この森から手をとってともに抜け出そう」と呼びかけ

  • 2021/2/6

 新型コロナの感染拡大が今も続くマレーシアでは1月13日、首都と5州の活動制限を伴うロックダウンに踏み切った。1月17日付のマレーシアの英字紙スターは、この問題を社説で採り上げた。

マレーシア政府は1月13日、首都と5州の活動制限を伴うロックダウンを発出した ©iStock

 

1日の新規感染者が4000人超に
  マレーシアからの報道によれば、1月13日から実施されたロックダウンは当初14日間の予定だったが、感染者数が抑制傾向にならなかったことから、2月4日まで延長され、その後さらに2月18日まで延長された。マレーシア国内の感染者は、これまでに19万人以上。死者は700人を超えている。また、いったん落ち着いていた1日あたりの新規感染者数は、昨年10月ぐらいから徐々に増え始め、一時は初めて4000人を超えた。現在も、1日3000人を上回る状態が続いている。
 社説は、「1日の新規感染者数が増え続け、初めて4000人を超える事態となり、公立病院の病床が足りなくなっている。活動制限という厳しい手段は、国民を守るためにやむを得ないものだ。感染拡大防止のために、非常事態宣言によって政府や関連機関により強い権限を与えることもやむを得ない」
 社説によれば、非常事態宣言下では、新型コロナ対策のために民間病院を利用する権限が政府に与えられるという。これにより、保健省は軽症者や無症状者の治療に民間病院を利用することを検討中だという。

基本再生産数を1以下に

 社説は、「これらの措置は、2020年にイタリアで起きたような医療崩壊をこの国で起こさないことが目的だ。民間医療機関を活用すれば、マレーシアの保健システムはまだ崩壊に至らない」と、指摘する。
 他方、社説は「マレーシアは非常に危機的な状況にある」と指摘し、マレーシアの新型コロナ感染における基本再生産数(RO)が、現在、おそらく1.16前後ではないかという専門家の見方を紹介している。RとOは、一人の感染者が何人に感染させるか、という数値である。感染者が急増していないころは、この数値は1を下回っていた。専門家は「もしROが1.2を超える事態になれば、1日の新規感染者は8000人レベルになるかもしれない」と警告しているという。
 「私たちは、お互いの手をしっかり取り合い(もちろん比ゆ的な意味で)、この病気に打ち勝たなくてはならない。何とかしてROを1以下に戻し、ロックダウンの延長を避けなければならない。さもなければ、経済や生活に破壊的な影響がもたらされる可能性がある」と、社説は強調する。

 「この感染症を乗り越えるために、人種や宗教や政治的な信条とは関係なく、国民一人ひとりになすべき役割がある。感染予防の措置として、手を洗う、公共の場ではきちんと鼻と口を覆ってマスクをつける、消毒剤を利用するといった対策を徹底しなければならない。最も大切なことは、不要不急の外出をせずにステイホームしていることだ。共にこの森を抜け出そう」
 多くの国で、感染拡大は第一波より規模が大きなものになっている。その一方で、私たちはこの危機的状況にすら慣れてきてしまった観もある。社説が言うように、私たちはいまだ深い森の中にいる。出口ではなく、むしろ森の奥深くへと進んでいるのかもしれない。そのことを改めて心に刻みたい。

 

(原文: https://www.thestar.com.my/opinion/columnists/the-star-says/2021/01/17/together-we-can-come-out-of-the-woods)

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