インドネシアでプラスチック袋の利用を禁止
人々の自覚を促す革新的な「ごみ銀行」
- 2020/7/10
日本では、7月1日からプラスチック袋が有料となった。一方、インドネシアの首都ジャカルタは日本より早く有料化に踏み切り、7月1日からはプラスチック袋の利用自体が禁止された。インドネシアの英字紙ジャカルタ・ポスト紙は、この問題をとりあげている。
破壊される海洋生態系
ジャカルタでは、昨年の12月末に公布されたジャカルタ首都特別州知事令142号によってプラスチック袋の使用禁止が決定され、半年間の周知期間を経て7月1日から施行された。これを受け、ジャカルタ市内の主要スーパーマーケットなどは、数カ月前からプラスチック袋の提供を取りやめているという。社説はこの動きについて、「店舗の規模によらず、古いタイプの市場であっても、今後、取り入れるべきニューノーマルだ」と、指摘する。
ジャカルタでプラスチック袋の有料化が実施されたのは、2019年3月1日だった。価格は1枚あたり200ルピア。今回の措置は、さらに一歩踏み込みプラスチック袋の使用を禁止したもので、違反すると罰金も科せられるという。社説によると、7月1日までの周知期間の間に行政は85の店舗、158カ所の市場、2000以上のコンビニでキャンペーンを実施して周知の徹底が図られたという。
社説は、「便利なプラスチック袋によって、われわれの買い物スタイルは大きく変わった。しかし、その結果、いまや多くのプラスチックごみが世界の海や海岸に廃棄され、海の生態系を破壊している」と、指摘する。「プラスチックごみが腹部に溜まったクジラが発見されたというニュースは、プラスチックがもたらす恐怖の象徴だ。カナダの研究者によれば、調査したすべてのクジラの消化器でマイクロプラスチックが確認された」
さらに、プラスチックのリサイクルには費用がかかる。社説は、「ジャカルタではほとんどのプラスチックごみがごみ集積場に積まれたままになっており、分解されるのに300年かかると言われている」と述べ、リサイクルの難しさを指摘する。
変化を実感する仕組み
新型コロナウイルスの感染拡大によって、人々の消費生活は大きく変化した。社説によれば、新型コロナウイルス以前は、ジャカルタ市内のあるごみ集積場には毎日7,702トンのごみが運びこまれており、今年1月時点のごみの総量はこの1カ所だけで30万5,339トンに上ったという。その3分の1以上を占めていたのが、プラスチックだった。しかし、感染拡大の影響で経済活動が制限されていた今年5月には、この集積場のごみの総量は18万9,979トンにまで減少したという。経済活動が縮小され、排出されるごみの量が明らかに減少したのだ。
「経済活動の再開に伴って、プラスチックを含むごみは再び増加し、同じ問題が繰り返されるだろう」と社説は指摘した上で、「プラスチックごみだけ、あるいは都市のごみ集積場だけの問題ではなく、これは環境全体に深刻な影響を与える長期的な問題として首都に住む人々が皆、真剣に考えなければならない」と、訴える。
こうした取り組みは、「禁止」したり、「罰則」を設けたりするだけでは効果が出ない。その例として、社説が紹介するのが、インドネシア各地で広がりつつある「コミュニティ・ウェイスト・バンク」の活動だ。これは、自治体やNGOが協力して広めている運動で、消費者がごみを指定の場所に持っていくと、量に応じてお金が支払われるという仕組みだ。ごみ回収のインフラが整っていない地域で広まり、成果を上げているという。この運動が広がっているのは、人々が変化を実感できるためだという。自分の取った行動でお金がもらえたり、ごみがなくなりきれいな環境が生まれたり、といった身近な「変化」を実感すること。それが広がりのカギを握っている、という。
インドネシアをはじめ、東南アジア諸国から出るプラスチックごみは、世界の総量の6割を占めるという。待ったなしの対策が必要だ。
(原文:https://www.thejakartapost.com/academia/2020/07/02/life-without-plastics.html)