タイの地元紙が陸軍改革を要求
銃乱射事件から1年が経っても明かされない真相、相次ぐ疑惑

  • 2021/2/10

 タイ東北部のナコンラチャシマで、陸軍兵士による銃の乱射事件が起きたのは2020年2月8日のことだった。それから1年が過ぎ、タイの英字紙バンコク・ポストは1月24日付の社説でこの問題を採り上げた。

2020年2月11日、タイ東北部で陸軍兵士の男が銃を乱射した事件後に会見したアピラット 司令官(当時)©ロイター/アフロ

発端は不動産ビジネス

 2021年1月半ば、タイ国軍は「国軍の日」を祝う式典を開いた。「国軍の日」とは、1593年にタイのナレスワン大王がビルマ軍を破ったことを記念した日である。この記念日にあたり、バンコク・ポストの社説は、「最も力を持つ国の機関である国軍の記念日は、その力と団結力を国民に示す日でもある。しかし国軍は、昨年のコーラート(ナコンラチャシマ)で発生した銃乱射事件を受け国民に約束した改革を実行しているのかどうか。説明が必要だ」と、している。

 銃乱射事件は昨年2月8日、ナコンラチャシマの兵舎で陸軍のジャカパン・トンマ容疑者(当時32)が上官らを殺害した後、市内のショッピングモールに立てこもって銃を乱射。29人を射殺、57人を負傷させた後、16時間後に治安部隊によって射殺された、という事件だ。一連の行動がソーシャルネットワーキングサービスに投稿されたことにより、国民に大きな衝撃を与えた。

 社説によれば、事件はジャカパン容疑者が土地の問題で上官や容疑者の義母と口論となり、殺害したのが発端だったという。彼らは陸軍兵士相手の住宅ビジネスに関与しており、後にこの上官が金をだましとっていたことが明らかになった。社説は、「事件の原因は陸軍にある、と多くの人が指摘した」「多くの陸軍兵士が民間ビジネスに手を染めていることは公然の秘密であり、ある政治評論家はロイター通信の取材に対し、“国軍の上官たち、とくに地方にいる幹部たちが不動産ビジネスに関与することは決して珍しいことではない”と指摘している」と報じている。

報道官はあいまいな説明に終始

 事件直後の2月11日、陸軍のアピラット・コンソンポン司令官(当時)は、兵士がビジネスに関与したことで問題が起きたことを認め、この問題について調査をすると約束したという。しかし、社説によれば、その後、銃乱射事件は「個人的な対立が原因で起きた」とされ、組織全体の問題としては採り上げられなかったという。

 銃乱射事件以外にも、国民が陸軍に不信感を抱く事件が起きている。その例として、社説はバンコクで起きた21歳の兵士の死を挙げる。陸軍病院は彼の死について「心拍異常が認められた」としており、死因は外傷ではないと発表したが、ネット上では「不審死ではないか」と、さまざまな憶測が飛び交ったという。

 また、プラユット首相に近い陸軍幹部がナコンラチャシマの7万ライ(1ライは1600平方メートル)に及ぶ森林地帯の違法譲渡に関与している疑いがあるという市民活動家の告発もある。

 昨年2月8日の銃乱射事件に関して言えば、陸軍がは「犠牲者の遺族に見舞い金を渡した」と説明しただけで、陸軍報道官はそれ以上何も説明しなかったという。

 「報道官は、事件は調査中である、と述べただけで、あいまいな返答に終始した。アピラット前司令官の後を継いだナロンパン司令官は、近代的で合理的、かつ軍人としてのプロフェッショナリズムを持ち、政治とは適切な距離を保つ陸軍であってほしいという国民の願いを実現する存在になるだろうか。このようなあいまいな対応では、改革はまた先送りされるのではないか、と国民が不安になるのも当然だ。陸軍はどうすれば信頼を取り戻せるのか。先行きが不透明な昨今の国際状況の中、国防のためには、信頼に足る有能な軍事力が必要だ」

 衝撃的な事件で多くの犠牲者が出た後も、変わらぬ陸軍の現実。昨年から続く王室改革や、プラユット政権への不信感の増大とともに、陸軍改革は今のタイにとって最も重要な課題である。

 

(原文: https://www.bangkokpost.com/opinion/opinion/2055943/army-must-be-accountable)

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