「戻ってきたデモ隊」
命がけで闘う、優しい人たち

  • 2021/4/24

【編集部注:】

厳しい弾圧によってデモ隊の声も少なくなったヤンゴンの街に4月23日、わずかな時間、デモ隊が戻って来たそうです。拘束された女子大生への性的暴力に抗議すべく、軍の監視の目をかいぐぐり、リスクをおして抗議の声を挙げた若者たちの様子を伝えるFacebook投稿をご紹介します。

~ 以下、Facebook投稿より ~

「ミャンマーは内戦状態なの?」と聞かれることがある。
私がヤンゴンで見ている答えは、NOだ。
内戦どころか、銃声さえ聞かない。戦車も見ない。 
ただ、町から軍の姿が消えることはない。
==
数日前にショッピングセンターに行った時、
ふと窓の外を見ると、高架下に警察車両が数台並んでいた。
あれ、検問かな・・・
帰りはあの道は通らないようにしよう。
そう思って買い物を済ませた1時間後、そこにはもう軍の姿はなかった。
移動しながら、市民生活を監視してまわっているのだろうか。
なんとなーく感じる、じめっとした不気味さ。
市内には何カ所か、当局がバリケードを張っているところがあって
当然、バリケードの向こうでは兵士がうろうろしている。
誰に危害を加えるわけではないが、条件反射で身構えてしまう。
場所によっては「ちょっと通して」と頼めば、端っこを通らせてくれたりするらしいが、
個人的には、とてもそんな気にならない。
ぐるりと回り道して歩く。
==
数日前、たまたま通りすがった道すがら
久しぶりに、土嚢袋を積み上げるタイプのハードなバリケードを見かけた。
夕暮れの薄暗い空気の中、土嚢袋の向こうには、兵士がうようよしている。
すでに、一見何事もなくなったような街の中で
1カ所だけ「えっ、何ここ」と思うような異様な空気。
一瞬びっくりして足を止めそうになると、監視役の兵士がヌッと立ち上がる。
いかんいかん。興味を失ったふりをして、その場を立ち去る。
あとから聞いた話では、ここは兵士の駐在所になっているところで
連休中に、何者かがここに爆弾での攻撃を仕掛けたのだという。
今さらバリケードを張っても、、、と思うが、
攻撃を受けた以上、何も対策しないわけにもいかないのだろう。
==
そんなヤンゴンに今日、なんとデモ隊が戻ってきた。
仕事中、ミャンマー人の同僚が声をひそめて
「今日からまたデモが始まるよ」と教えてくれた。
「え、危なくないの?」とアホみたいな質問をすると
「危ないに決まってるじゃない。だからゲリラ的にやるの」とのこと。
なるほど、24日のASEAN首脳会談(@インドネシア)に
国軍総司令官が出席するのに反対するデモだな、と思いきや、
彼女によると、もうひとつ事情があるらしい。
「この間逮捕された大学生の女の子が、刑務所で性的暴力を受けたという話があってね。
 刑務所の取調室で、女性器を蹴られた、という証言が広がったの。
 おとといまではただの噂だったんだけど、昨日それがどうやら事実だとわかったみたい。
 だから、許さないぞ、という抗議の意を示すんだって」
帰宅してSNSを開くと、
そこには確かにゲリラ的にデモをする若者たちの姿があった。
急いでデモをして、急いで撤収する。
町中に散在している兵士たちが、騒ぎを聞きつけて駆けつけてくる前に。
以前に比べたら、決して大きなデモではない。
でも、自由を、人権を、決してあきらめない。
命がけで闘う、優しい人たち。
どうかその命が守られますように、と祈る。
(↓ 戻ってきたデモ隊の様子。がんばれ、負けるな!)

ヤンゴンに帰ってきたデモ隊。 性的暴行を受けたと言われている女の子と、同じ年ごろの若者たちだ(c) The Irrawaddy

女の子の姿もある。同じ目にあうかもしれないとわかっていながら立ち上がったのだ。すごい勇気だと思う (c) Mizzima News

Back to Barrack「兵舎に帰れ」 階段にこっそり書かれたメッセージ。 そうだそうだ、と思いながら階段を上る(筆者撮影)

落ち込むこともたくさんあるけど、顔を上げて前に進もう(筆者撮影)

 

動画引用元URL:https://fb.watch/53d_FVZenE/

 

関連記事

 

ランキング

  1.  ドットワールドとインターネット上のニュースサイト「8bitNews」のコラボレーションによって20…
  2.  11月5日に投開票が行われた米大統領選挙では、接戦という事前の予想を覆して共和党のドナルド・トラン…
  3.  11月5日に投開票が行われた米大統領選でトランプ氏が再選したことによって、国際情勢、特に台湾海峡の…
  4.  政治的に不安定な国や地域に囲まれながらも、比較的安定した治安と政治を維持してきた中東の王国ヨルダン…
  5.  ジャーナリストの玉本英子さん(アジアプレス・インターナショナル)が10月26日、東京・青山で戦火の…

ピックアップ記事

  1.  ドットワールドと「8bitNews」のコラボレーションによって2024年9月にスタートした新クロス…
  2.  米国・ニューヨークで国連総会が開催されている最中の9月25日早朝、中国の大陸間弾道ミサイル(ICB…
  3.  「すべてを我慢して、ただ食って、寝て、排泄して・・・それで『生きている』って言えるのか?」  パ…
  4.  今秋11月5日に投開票が行われる米大統領選挙は、現職のジョー・バイデン大統領が撤退を表明し、波乱含…
  5.  かつて恵比寿の東京写真美術館で、毎年開催されていた「世界報道写真展」。その拠点となるオランダ・アム…
ページ上部へ戻る