米国で起きたトランプ前大統領銃撃事件と中東諸国の反応
中東情勢の監視機関は事件をどう伝えたか
- 2024/7/27
米国・ペンシルベニア州で7月13日、共和党の集会の演説中にトランプ前大統領が銃撃される事件が起きました。 トランプ前大統領への被害は軽傷ですんだものの、今回の暗殺未遂事件は世界中を震撼させ、多くの議論を巻き起こしました。
イギリスを拠点に中東情勢を伝える2つのメディアの報道ぶりを紹介しました。
米国内では「抑圧されたジハード戦士のよう」
英国で2009年に立ち上げられた非営利の報道監視組織ミドル・イースト・モニターは、トランプ元大統領が銃撃された翌14日付で、「今回の事件後、トランプ氏の扱われ方はまるで抑圧されたジハード戦士のようだ」と報じた。
例えば、テキサス州知事グレッグ・アボット氏は、「人々は彼(トランプ氏)を投獄しようとし、殺そうとした。しかし、どれも成功しない。なぜなら彼は不屈だからだ」と発言し、トランプ氏を熱烈に支持した。
また、州の司法長官ケン・パクストン氏は、威圧的な聖書的言葉を用いてトランプ氏を次のように讃えた。「世界は悪である。そんな中、トランプ大統領が自力で歩き去ることが出来たこと、神に感謝する。彼の完全な回復と、その人物(犯人)がすぐにでも捕えられることを祈ろう」
ミドル・イースト・モニターは、「米国ではこれまでにも候補者が冷酷に銃殺されたことがあり、このような暴力行為がアメリカ政治を血生臭いものにしている」と指摘。そのうえで、フロリダ州の共和党上院議員リック・スコット氏の「メディアの民主党員やリベラル派はトランプをファシストと呼んだ。彼らはトランプをヒトラーと比較し、彼を投獄しようとし、シークレットサービスの保護を取り除こうとした」という発言を引用し、「今回の事件は過激な左翼のレトリックに触発された狂人による暗殺未遂に他ならない」と述べている。
賛否が分かれた中東諸国の反応
ミドル・イースト・モニターと同様に、ミドル・イースト・アイも事件翌日の7月14日、今回の事件を取り上げた。こちらは、「共和党の最有力候補であるトランプ氏に反対する人々からも非難が殺到しただけでなく、中東各国の首脳からも大きな反響があった」と報道した。
例えば、エジプトのシシ大統領がFacebookで「私はトランプ前大統領並びに大統領候補に対する攻撃を憂慮し、エジプトがこの事件を非難することを改めて表明する」と発表したほか、トルコのエルドガン大統領も「米国の選挙と世界の安定に影を落とさないために、この事件の背後にいる者たちが裁かれることを望む」と声明を発表したという。
その一方で、トランプ前大統領が在任中最後にイランのアルクッズ部隊の元トップ、カセム・ソレイマニ氏の暗殺を命じたことを受け、イランを後ろ盾とするイラクの抵抗勢力グループと提携しているサブリーン・ニュースの公式テレグラムとXのアカウントは、出血しているトランプの写真に 「今日、恐怖(テロ)が要塞化された宮殿に侵入した」というキャプションを添えて投稿した。
また、イランのジャーナリストで元外交官のアミール・ムサウィ氏は、今回の攻撃がソレイマニ氏、および同氏と同じタイミングでアメリカ軍に暗殺されたイラク政府高官で非正規の人民動員部隊の責任者であるムハンディス氏の殺害に対する「神の」報復であることをほのめかし、「魂には魂を、目には目を」とツイート。次はネタニヤフ首相が狙われる可能性があると示唆した。
出典:
イギリス・Middle East Monitor:
https://www.middleeastmonitor.com/20240714-the-convulsed-republic-the-shooting-of-donald-trump/
イギリス・Middle East Eye:
https://www.middleeasteye.net/news/middle-east-reacts-trump-assassination-attempt