コロナ禍から回復しつつあるネパールの観光業
国内旅行者に商機見出す関係者

  • 2021/10/25

 新型コロナの感染拡大で最大の影響を受けた産業の一つが、観光だ。ネパールの英字紙カトマンドゥポストは、自国を含む各地で移動制限が緩和されつつある中、観光業界の戦略について考察する社説を掲載した。

ネパールで国内観光者を対象に観光業界が復活を図ろうとしている(c) Volker Meyer /Pexels

前年より8割減も、明るい兆し

 社説はまず、新型コロナの感染拡大で、人々の暮らしが変わったことをこう表現した。
 「新型コロナは働くことの意味を変え、レジャーの意味も変えた。全国で職場や市場や工場が閉鎖され、さらに移動が制限され、働くことも、休暇の過ごし方も大きく変わった。多くの人々は、新型コロナの感染爆発によって仕事を失い、収入を失った。そのため、遊ぶこともできなくなった。他人と接触しないことが求められ、移動も制限されて人々は家にいることを強いられた。観光セクターは、新型コロナの最大の犠牲者の一つとなった」
 社説によると2020年、世界の観光地では旅行者数が、2019年に比べて10億人も減少した。2020年、ネパールは23万85人の外国人旅行客を受け入れた。2019年に比べると8割減だ。さらに、今年4月に感染拡大の第二波が起きたことで、息を吹き返し始めていた観光業界は再度、影響を被ったという。
 「しかし、再度の活動制限を経て、観光業界は国内観光客によってリバウンドの兆しが表れつつある。ネパール政府は今、外国人観光客の受け入れを開始し、ワクチン接種済みの観光客については隔離措置を緩和することも始めている。私たちは、回復のフェーズに入っているのだ」

旅のスタイルの変化を読み取れ

 このような状況下において、社説は「短期的な回復計画について、旅のスタイルの変化を読み取る必要がある」とする。
 「どのように旅をするか、交流をするか、食事をするか、大きく変化した。<気を付けて安全に>が旅のキーワードになり、混雑するような場所ではなく、自分たちだけで過ごすことが好まれるようになった。若者たちも湖のほとりで過ごすことを好むようになった。もしも観光客が混雑な場所よりも静かな場所を求めるなら、観光業界はその需要に合わせなければならない」
 そのうえで、長期的には「感染爆発後の社会の変化」を読み取るべきだと指摘する。
 「新型コロナの感染が始まって一年半が経ち、世界中の企業で、雇用者も従業員も毎日通うことだけが働くことではないと考えるようになった。コロナ後の新しい労働文化が生まれつつある。そして、休暇の過ごし方も変わりつつある。観光業界が生き残るためには、その考えにもついていかなければならない」
 社説によれば、国内旅行にも変化が見えるという。観光業界が彼らに関心を寄せ始めたのだ。その理由は2つあるという。第一に、ネパール人旅行者が食事やそのほかの旅行先での観光消費に意欲的であること。そして第二に、外国人観光客に比べて短期間の休暇が取りやすく、短期の旅行ができることだ。「何カ所も一度に回るのではなく、一カ所にとどまり滞在するという旅行スタイルが増えている」と社説は指摘する。
 新型コロナの感染は今も拡大しているが、ワクチン接種や新しい生活スタイルの定着によって「コロナ後」の世界の姿が少しずつ見えてきている。その中で「最大の犠牲者」である観光業界がいかに復活を遂げるかは、世界中どの国も抱える共通の課題だろう。「旅」の需要は消えることはなく、多くの人が必要としている。安全に慎重に、旅への扉を開いていってほしい。

 

(原文https://kathmandupost.com/editorial/2021/09/26/reviving-tourism-1632673096)

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