インド最高裁、同性婚を認めず
世界最多の人口を誇る国で、遠ざかる性的少数者の希望

  • 2023/12/14

 インドの最高裁は10月17日、同性同士の婚姻について、「性的少数者の婚姻は、議会で議論されるべき問題だ」として、合法化を認めない判決を下した。インドのモディ政権は同性婚に否定的であり、この最高裁判決によって、同性婚の法制化はさらに遠のいた、とみる関係者が多い。

2019年、ムンバイで開催されたプライドパレードでの一コマ (c) NamanKoul /wikimediacommons

 インドでは、同性婚の法制化をめぐる最高裁の審理が始まって以来、国内で同性婚に対する関心が高まっている。同国では2018年、イギリス植民地時代から維持されてきた、同性間の性行為を犯罪とする規定が撤廃された。それ以降、同性カップルが非公式ながら婚姻と同等の関係を結び、結婚式を開くことも増えた。同性間のマッチングアプリも盛況だという。

 アジアで同性婚を合法化しているのは台湾とネパールだけ。ただ、ネパールでは合法との暫定的判断が下されたものの、法制化は遅れている。今回、インド最高裁が合法だとの認識を示せば、アジアで3カ国目となる見込みだった。

自国の性的少数者の状況を「残念」とインド紙

 インドの英字メディア、タイムズオブインディアは10月18日付紙面で「結び目を解く」と題した社説を掲載した。

 「結婚の平等は、最高裁判所の同意を得られなかった。5人の裁判官は、細かな点で意見は異なるものの、全員が同性婚を認める特別婚姻法の改正を拒んだ。裁判所は、人権の問題として憲法を改正するのではなく、議会に決定権を委ねた」

 社説は、最高裁が同性婚を憲法上の人権として明確に認めなかったことを「残念だ」と述べる。「性的少数者には、生命と自由、平等、公平に関する基本的な権利が与えられているのだろうか。(婚姻法の改正を)請願した人々が求めていたのは、この国の法律を、性別に縛られない中立的なものとすることだった。社会的な承認ではなく、異性間の結婚と同様に、同性間の結婚にも権利と責任をもたらすことを求めていたのだ」

同性婚を暫定的に認めるネパール、後ろ向きの判決を批判

 同性婚の合法化を暫定的に認めているネパールの英字紙カトマンドゥポストは10月19日付紙面で、「インドに欠けている色」と題した社説を掲載。インド最高裁の判断について、「長らく同性婚の合法化を待ち望んでいた多くのインド人を失望させた」とした。

 「世界中の国が同性婚の合法化に向けて動いている中、インド最高裁の判決は後ろ向きなものだった。世界最大の民主主義国の最高裁は、ネパールの前例に目を向けることもできたはずだ。もちろん、ネパールの状況は理想的とはいえないが」と、社説は指摘する。

 だが社説は、インド最高裁の判決の中には「唯一の希望」もある、という。同性婚の合法化こそ認めなかったものの、判決文の中には「同性婚を人権として認めた部分」があり、また、政府に対して「性自認や性的指向を理由に差別されるべきではない」と差別禁止を求めたからだ。

 そのうえで、社説はこう読み解く。「同性婚の合法化に至るまでの道のりは、かなり険しい。一見、同情的な表現にみえる部分もある判決だが、インドの性的少数者のコミュニティーに尊厳をもって生きる希望を与えることはできなかった。多様な性的指向を受容し、人権に配慮したコミュニティーを創りたいという人々の希望は遠ざかってしまった」

 

(原文)

インド:

https://timesofindia.indiatimes.com/blogs/toi-editorials/untying-the-knot-do-same-sex-couples-have-same-constitutional-rights-as-straight-couples-yes-should-have-been-scs-answer/

ネパール:

https://kathmandupost.com/editorial/2023/10/19/india-s-missing-colours

 

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