化石燃料の「脱却」で合意したCOP28 残る課題は
成果の受け止め方に賛否分かれたアジア各紙
- 2024/1/20
国連気候変動枠組条約締約国会議(COP28)が2023年11月30日から12月13日までアラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開かれた。会議では2030年までに「化石燃料から脱却する」ことを盛り込んだ合意文書が採択され、エネルギー転換の方向性が初めて明確に示される結果となった。アジア各紙の社説では、COP28の成果や課題について、それぞれの視点で論じられた。
初参加のネパール 気候変動で荒れ狂うヒマラヤ
ネパールの英字紙カトマンドゥポストは2023年12月6日付で「スポットライトを浴びる」と題した社説を掲載した。
ネパールは今回のCOP28で初めて自国のパビリオンを設置し、「山の呼び声:気候危機から私たちを救うのは誰か」と題したハイレベル円卓会議を開いた。2023年10月に国連のグテーレス事務総長がネパールを訪するなど、気候変動がヒマラヤ山脈一帯に与える影響について、世界の注目を集めている。
社説によれば、ネパールは過去30年間で氷河の3分の1近くを失った。世界の気温が1度上がると、ネパールの山岳地帯の気温は1.8度上がり、洪水や地滑り、氷河湖の決壊などの自然災害が起きるという。
今回の会議について、社説は「山々が気温の上昇に苦しめられている中、世界でスポットライトを浴びたことは、ネパールにとって大きな功績だ」と、高く評価した。しかし、「それだけでは不十分であり、政治的課題は山積している」と釘をさす。その例として社説が挙げるのが、前回のCOP27で設置された「損失と損害」補助金制度だ。これは、地球温暖化に関してより重い責任をもつ先進工業国が、自然災害などの被害を受けている途上国を援助する基金で、COP28では今後の運用の大枠が決まり、各国の基金への拠出も表明された。社説はこれを「ポジティブなニュース」だと評価する一方で、運用については「被援助国の取り組みをしっかりと監視する必要がある」と指摘している。
シンガポール紙は「妥協の産物」と悲観的
シンガポールの英字紙ストレーツタイムズも、2023年12月15日付の社説でCOP28について取り上げた。
社説は、COP28で「脱化石燃料」を協議したことは、各国にとって外交的成果になるだろう、と一定の評価をした。「30年近くにわたる国連気候変動交渉の中で、気候変動対策における化石燃料の役割を公式に認めたのは初めてのこと」だからだ。
しかし社説は、合意された目標が、化石燃料の「脱却」という表現にとどまったことについて、「湾岸諸国やロシアなどの抵抗で、化石燃料の『段階的廃止』を求めることは最終決定文書には盛り込まれなかった。COP28は最終的に妥協の産物となってしまった」と指摘する。また、今回の合意は長い目でみれば「土台になる」としながらも、残された課題についても言及する。例えば、途上国にとっては、対策の資金源が明確になっていないことや、米国やオーストラリア、インドネシア、湾岸諸国などで石油・ガス生産の新たな事業に巨額の資金が投じられていることなどだ。社説は「課題は非常に大きい」と悲観的な見方を示している。
「曖昧なまま終わった」会議に批判的なインド紙
インドの英字メディア、タイムズオブインディアは、2023年12月15日付で「化石が支配するCOP28」と題した社説を掲載した。その論調は、「COP28は曖昧な気候変動協定で幕を閉じた」と、批判的だ。
社説は、「世界気象機関はCOP28の直前、2023年が人類史上、最も暑い年になったことを発表した。この事実からも明らかな通り、気候変動の影響を受けない国はない」と述べ、この課題が世界共通の危機であることを改めて強調した。そのうえで、COP28については「国連がまたもや曖昧な気候変動協定のまま閉幕したことに驚く国はない」と、皮肉めいた表現で批判する。
具体的には、各国に呼び掛けられた「化石燃料からの脱却に向けた<貢献>」という表現の曖昧さや、脱化石燃料という掛け声と裏腹に化石燃料のための補助金が、2022年までに過去最高の7兆ドルに急増している現実などについて指摘している。
(原文)
ネパール:
https://kathmandupost.com/editorial/2023/12/06/use-the-spotlight
シンガポール:
https://www.straitstimes.com/opinion/st-editorial/deeds-must-follow-cop28-s-decisions
インド:
https://timesofindia.indiatimes.com/blogs/toi-editorials/fossils-will-rule-cop28s-words-on-green-transition-are-predictably-undercut-by-harsh-economic-truths/