動かぬ「お役所」に憤る移民労働者
ネパールの在外公館は邦人保護の責任果たせ
- 2019/7/20
GDPの25%を占める海外送金
外国人労働者をめぐる問題は、日本を含む世界各地で重要なテーマとなっている。ボーダーレスといわれる時代、モノだけでなく人もまた、さまざまな形で国境を越える。ネパールについて言えば、1990年代から隣国インドなどへの出稼ぎが増え始め、現在では、中東・湾岸諸国やマレーシア、韓国などで40万人以上が働いており、彼らからの海外送金はGDPの約25%を占めている。
ネパールの英字紙「カトマンズ・ポスト」は7月12日、ネパールから中国に出稼ぎに出た女性たちが仲介業者にだまされた事件を社説で取り上げた。この社説では、移民労働者はネパール国民だという立場から、「いつものお役所仕事」を改め、真剣に救出にあたるべきだ、と当局者たちに迫っている。
契約違反にも泣き寝入り
カトマンズ・ポストによると、今回の事件は、「コンパス・リクルートメント」という職業あっせん業者が、中国遼寧省の丹東市にある工場での仕事をネパール人女性に紹介したことに始まる。44人の女性が、この業者に10万ネパール・ルピーを支払い、中国へ渡った。
しかし、業者が女性たちに約束した「月額$400」の給与は、たった$50しか支払われず、一日8時間と約束されたはずの労働時間も11時間半を超えた。そもそもパッキング工場と聞いていたのに、縫製工場であった上、食事は1日に2回だけ。8人で一部屋の劣悪な環境での生活を強いられたという。
ポスト紙は「以前報じたカタールでのトラブルと同じように、今回も外国で困り、助けを求めているネパール人がいる。今回のケースは、明らかに中国の雇用主とネパール側の仲介業者が関わる契約違反だ」と断じた。また、こうした状況では特に、女性たちは弱い立場にあるため、当局に訴え出ることを恐れている、とも指摘した。