パキスタンでもTikTokの使用を禁止
表現の自由への規制に地元英字紙が懸念を表明

  • 2020/10/22

 中国のIT企業「バイトダンス・テクノロジー株式会社」が運営する動画投稿アプリTikTok(ティックトック)の使用をめぐり、世界でさまざまな動きが出ている。米国ではダウンロードが禁止され、インドでも使用が禁止された。パキスタンでも10月9日に使用禁止が通達され、波紋を呼んでいる。10月11日付のパキスタンの英字紙ドーンは、この問題を社説で採り上げた。

パキスタンでもティックトックのダウンロードが禁止された (c) Kon Karampelas / Unsplash

世界で12番目の利用者数

 パキスタン政府は10月9日、ティックトックの使用を禁止する通達を出した。ドーン紙の報道によると、政府はその理由について「“道徳に反する”、“わいせつだ”、といった苦情が多方面から寄せられた」と説明しているという。ティックトックは、パキスタン国内では4300万回ダウンロードされており、ワッツアップ、フェイスブックに次いで3番目に利用度の高いアプリだ。

 他方、わいせつな動画の配信にも利用されており、社会問題となっていた。社説によれば、昨年7月から12月までの間に4900万件ものティックトック動画が削除されているが、その多くはわいせつ動画で、削除された動画の3分の1はインドから配信されたものだという。

 パキスタンは世界で12番目にティックトックの利用者が多い国だ。社説は、「このことは、このアプリがパキスタンで都会か農村部かを問わず、いかに国民に愛されているか物語っている」と指摘した上で、「彼らは、今回の決定に対して怒りをあらわにしている。ティックトックは彼らにとって創造的な表現の場なのだ」と述べ、政府が一方的に使用禁止を決定したことを批判する。

「デジタルパキスタン」政策との矛盾も

 社説によれば、ティックトックは、ごく普通の市民から「スター」を生み出した。その才能は、既存のルートでは日の目を見ることがなかったものだ。その意味で、「インターネットや携帯電話によって、社会がいかに民主化を実現するか示される」と、社説は強調する。

 「しかし、残念なことに、パキスタン通信当局はこのアプリを“不道徳で下品なもの”と決めつけ、禁止した。数カ月前にティックトックに対して警告を発していたとされているが、このアプリのコンテンツがどのように問題で、人々にとってどう有害なのか、明確には示されていなかった」

 パキスタンでは最近、ビスケットのテレビコマーシャルが「わいせつだ」という理由で禁止された。社説は、この広告もティックトックのアプリも禁止の理由が「わいせつ」であったことを挙げ、「下品だ、社会に有害だといったあいまいな理由がまかり通っていること自体が危険だ」と、指摘する。

 さらに社説は、明確な基準や理由なしにアプリを一律に禁止することは、「デジタルパキスタン」を政策に掲げている政府の方針と矛盾するものであり、若い人々の可能性と機会を奪う、と懸念する。

 「こうしたアプリの禁止措置は、広告収入を通じてソーシャルメディアを効果的に利用しようとしている人々の足を引っ張り、政府による新たな規制へとつながりかねない。政府に問いたい。いったい、どこまで規制をするつもりなのか」

 インドや米国では、ティックトックをめぐる議論は「アプリを通じて国益を損なう情報が中国へ渡っている疑いがある」ことに端を発していた。しかし、パキスタンでは「公序良俗に反する」ことを理由に禁止された。デジタル時代の新たなツールであるアプリの利用をめぐり、世界で模索が続いている。

 

(原文: https://www.dawn.com/news/1584438/tiktok-ban)

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