政治の道具にされたバンコクのごみ問題
安全で効率的な収集への遠い道のり
- 2019/9/11
どの国のどの町でも、ごみの収集は常に課題を抱えている。特に、急速に発展するアジアの都市部では、深刻な問題だ。東南アジア諸国の中でも抜きん出て都市化が進むタイの首都バンコクでも、ごみ収集にかかるコストと住民からの徴収額には大きな開きがある。
タイの英字紙バンコク・ポストは9月10日付の社説で、バンコク都知事がごみ収集料金の大幅な値上げを断念したことを取り上げ、その理由について書いている。
近づくバンコク都知事選
社説によると、バンコクのアサウィン・クワンムアン知事はこのほど、世帯ごとに徴収するごみ収集費を1カ月あたり20バーツから、4倍の80バーツにまで引き上げる計画を断念した。
この理由について、同紙はこう指摘する。「大幅な引き上げは、アサウィン知事にとって厳しい選挙になることが予想される次の都知事選において、一層不利になるためだ」。つまり、引き上げの断念はアサウィン知事自身の政治的な理由であり、知事が公に説明した「各家庭の経済的な負担を軽減するというタイ政府の方針に沿った判断」という理由を一蹴したことになる。
次回のバンコク都知事選は、来年初頭までに実施される見込み。現職のアサウィン知事は、2016年10月に汚職疑惑で職務停止となった前知事の後任として、当時の軍事政権に任命された。バンコク・ポストによれば、アサウィン知事は知事選に出馬するものとみられるが、対立候補には、アピラック元都知事や、保険会社ムアンタイ・インシュランスの女性社長であるヌアンパン氏ら有力とみられる名前が挙がっており、厳しい戦いは免れない模様だ。