政治の道具にされたバンコクのごみ問題
安全で効率的な収集への遠い道のり
- 2019/9/11
かけ離れたコストと徴収額
激戦となりそうな都知事選を背景にしたごみ収集費の引上げ問題。社説はそれを政治の道具としたアサウィン知事に否定的だ。その根拠として、社説は「2005年以降、値上げされていない」という20バーツのごみ収集費が、実際にかかっているコストとかけ離れていることを挙げる。
社説によれば、ごみ収集に実際にかかるコストは、なんと1世帯あたり228バーツだという。うち130バーツがごみ収集の費用、98バーツがマネジメント費用だ。バンコク都によれば、年間のごみ収集・処分費用は約69億バーツに上るが、住民から集める収集費は5億バーツあまりで、10%にも満たないという。仮に、一世帯当たり80バーツに値上げできたとしても、年間15億バーツにとどまるというから、道のりは遠い。
また、社説は保険局が「安全で効率的なごみ収集」には一世帯当たり月額220バーツ必要だと指摘したことにも触れ、次のように述べる。
「アサウィン知事が、公衆衛生や環境問題よりも個人の政治的野心を優先したことは、きわめて残念だ」「知事は、すべての都民が収集費の引き上げに反対しているわけではない、ということも認識するべきである。引き上げによってごみ収集が改善し、ごみ削減、リサイクルなどのための啓発活動に役立てられるなら、引き上げを歓迎する人たちも多い」
そして、こんな辛辣な言葉で記事を締める。「懸命にごみ収集をする人々の姿は知事の心から消えてしまった。彼らはもう一年、厳しい労働環境に向き合い、本来さらされる必要のない健康リスクにさらされなければならないのだ」
(原文:https://www.bangkokpost.com/opinion/opinion/1746544/what-price-a-clean-city-)