米国のアフガニスタン政策をインドの社説が鋭く批判
「危険な自信過剰と虚偽」、批判の矛先は中国にも

  • 2021/8/30

 タリバン勢力がアフガニスタンを支配し、米軍は8月31日までの撤退を迫られている。アフガニスタン国内の混乱がさまざまに伝えられる中、インドの英字紙タイムズオブインディアは、8月22日付の社説でアメリカを厳しく批判した。

(c) Andre Klimke / Unsplash

事実を直視しなかった過ち

 「これは明らかにサイゴンとは違う」
 社説はまず、米国のブリンケン国務長官の言葉の引用から始まる。米国がベトナム戦争から撤退した時の状況と、今回が酷似しているという多くの批判に対し、米政府が答えたものだ。
「ブリンケン国務長官は、カブールが米国にとって屈辱的な速度でタリバンの手に落ちた時に、そう主張した。その1カ月前、バイデン大統領も同じことを主張した。しかし、歴史を見れば、その類似性は明確だ。米国は再び、自らとは離れた遠い場所で、恐ろしいほどの計算違いをし、約束を破り、無実の市民たちを後に残し、去っていった。我がインド国民を含め、数千人もの人々がアフガニスタンを退去しようと空港に押し寄せた。米国はアフガニスタンであらわになった自らへの過信と虚偽を認めなくてはならない」
 社説は、米国とその同盟国によるアフガニスタン支配がいかに中途半端なものだったかを批判する。
 「民主主義の本来の素晴らしい能力とは、間違いを認め、自らをただす力があることだ。しかし、もしシステムが内側から崩壊していたらどうだろうか。米国のアフガニスタン支配の過ちは、政府軍がどれほど腐敗し、タリバンと結託していたかという事実を直視してこなかったということだ。そうしたことによって、米国はアフガニスタンから撤退せざるを得ない状況に追い込まれたのだ」

米中の間で独自のバランス

 「事実を直視しない」という過ちは米国に限ったことではない、と社説は続ける。
 「インドにも同じような話がある。スリランカ内戦でのインド平和維持軍の派遣だ。これは結局、双方を敵対させるような結果になってしまった。また、最近では、新型コロナ対策に早すぎる勝利宣言をした結果、第二波に見舞われ、高い代償を支払わざるを得なかった」
 社説は、「高い目標を掲げ、野心的になることは素晴らしいことだが、事実から目をそらしては危険だ。事実を見つめることが、より実りある戦略へとつながる」と、主張する。
 さらに社説は、矛先を中国に向けて厳しい言葉で攻撃を続ける。
 「中国は今、米国の誇りがアフガニスタンの失敗で息の根を止められたことを喜んでいるが、過剰な自信と虚偽は、中国自身の脅威ともなり得る。例えば、新型コロナの起源についてかたくなに隠していることもその一つだ。どのようにウイルスが拡散されたかという事実から目をそらすことは、中国自身の安全を揺るがすことになりかねないだろう」
 インドは、G7諸国を中心に築かれつつある「中国包囲網」で言えば、米国ブロックに入っている。米国を鋭く批判しながらも、最後はそれ以上の厳しい表現で中国を批判し締めくくるという論調には、インドならではのバランスが感じられる。

 

(原文https://timesofindia.indiatimes.com/blogs/toi-editorials/mission-unaccomplished-american-hubris-has-been-laid-bare-in-afghanistan-there-are-lessons-for-other-countries-too/)

関連記事

 

ランキング

  1.  中国解放軍の退役空軍上将で元中央軍事委員会副主席(軍内制服組トップ)まで務めた許其亮氏が6月2日昼…
  2.  ドットワールドと「8bitNews」のコラボレーションによって2024年9月にスタートした新クロス…
  3.  世界で最も権威のある報道写真コンテストの一つ、「世界報道写真(World Press Photo)…
  4.  「世界で最も美しい島」「最後の秘境」と称されるフィリピンのパラワン島。その美しい自然やコバルトブル…
  5.  かつて恵比寿の東京写真美術館で毎年開催されていた「世界報道写真展」。これは世界報道写真財団(Wor…

ピックアップ記事

  1.  2021年2月に起きた軍事クーデターをはじめ、大雨による洪水や未曾有の大地震など、苦難が続くミャン…
  2.  民族をどうとらえるか―。各地で民族問題や紛争が絶えない世界のいまを理解するために、この問いが持つ重…
  3.  第2話では、ヨルダンの首都・アンマンに住むパレスチナ人二世シナーンさんの話を通じて、パレスチナ問題…
  4.  トランプ米大統領が打ち出す相互関税、いわゆる「トランプ関税」が世界を震撼させている。4月9日に発動…
  5.  2月23日に行われたドイツの連邦議会選挙によって、極右政党である「ドイツのための選択肢(AfD)」…
ページ上部へ戻る