米軍のアフガニスタン撤退から2年 守られぬ人権
対米戦争とタリバン支配下で翻弄され続ける人々
- 2023/10/25
アフガニスタンから米軍が撤退し、タリバンが実権を握って2年が経過した。国内では今も深刻な人道危機が続いている。国連のアミーナ・モハメッド副事務総長は9月末、記者会見で「アフガニスタンにおける女性と少女の教育や労働の権利を守るようタリバン暫定政権に圧力をかけるべきだ」と述べた。
アフガニスタンでは、タリバン暫定政権によって女性の労働や教育を受ける権利が制限されているほか、経済制裁や自然災害などの影響によって食料危機も起きている。同国の支援を続けている日本のNGO、シャンティ国際ボランティア会によると、支援を必要とする人々は最大で国民の8割に上り、約600万人が飢餓の一歩手前であると警告されている。
アフガンのメディアが伝えた女性の権利侵害への批判
アフガニスタンのニュースメディア、トロニュースは9月29日、国連副事務総長が記者会見で「アフガニスタンにおいて、女性の権利が本来あるべき状態に確実に戻るように圧力をかけなけなければならない」と述べたことを報じた。記事では他にも、「イスラムの国々が国際社会から信頼を勝ち取りたいのなら、まず国家としての信頼を確立しなければならない。女性の権利をいつまで無視するのか、どこまで侵害するのか」という女性人権活動家の意見や、「国際社会もアフガニスタン暫定政権も、アフガニスタン女性が抱える危機的な状況と、アフガニスタンが世界から孤立している状況を直視する責任がある」という意見を紹介している。
さらに記事は最後に、「イスラムの国々は、国連副事務総長の発言についていまだどこもコメントをしていない」としたうえで、「タリバン暫定政権はイスラム教の原則に従って女性の権利を保障していると主張し、女性の権利を侵害していることを否定し続けている」と指摘した。
「撤退は致命的な失敗だった」と米軍司令官
アフガニスタンと国境を接するパキスタンの英字紙ドーンは、9月14日付の社説で米軍撤退後の2年間を振り返った。
社説は、米軍がアフガニスタンから「無秩序に撤退を完了した」際の指揮官であったケネス・マッケンジー退役大将が米国でインタビューに臨んだ際の発言を引用。マッケンジー氏がアフガニスタン撤退について、「誤った決定であり、致命的な失敗だった」と遺憾の意を示したことを紹介した。
社説によれば、米軍はアフガニスタン戦争に2兆ドル(約299兆6000億円)以上を費やし、米兵を含む数万人の犠牲者を出した。しかし、と社説は続ける。「最大の犠牲者は、アフガニスタン国民だ。死亡者は4万7千人を超えるという調査報告もある。そして、大量の血が流され、かけがえのない命が失われた挙句、タリバンによる支配が復活し、現地の情勢は2001年以前に逆戻りした」。さらに現在、アフガニスタンはイスラム国など、活発化するテロ組織の拠点となりつつある。
社説は、こう強く批判する。「アメリカの支配層は何か教訓を得たのだろうか。おそらく何も得てはいないだろう。テロとの闘いや民主主義支援の名目でアメリカが軍事力を投入したことは、アフガニスタンを荒廃させた上に、アメリカ国民には何の利益ももたらさなかった」
(原文)
アフガニスタン: https://tolonews.com/afghanistan-185300
パキスタン: https://www.dawn.com/news/1775706