「黄金のガチョウ」を殺すな
タイ観光産業が直面する課題
- 2019/9/20
「微笑みの国」のキャッチフレーズとともに、タイは長い間、東南アジアでも屈指の人気観光スポットであり続けている。政治的な混乱もあったが、広い国土と豊かな自然、数々の歴史的名所によって、観光客は途切れない。ところが、国の経済を支える柱である観光業が近年、伸び悩んでいるという。9月19日付のバンコク・ポスト紙は、観光資源を黄金のガチョウにたとえ、生かしきれていないタイの観光政策を批判している。
「数量」目当ての観光政策
バンコク・ポスト紙の社説によると、今年の1月から8月にタイを訪れた外国人観光客は、約2,650万人に上るという。昨年の同じ時期に比べて2.6%増えているものの、観光当局の予想は下回った。観光省はこの状況を受けて、今年1年間にタイを訪れる外国人観光客の予想数を、当初の4,020万人から3,900万人前後にまで引き下げた。
伸び悩みの要因は、巨大なマーケットである中国と欧州からの観光客が思ったほど伸びなかったことだ。社説は、「果たして観光省のマーケティング戦略は適切なのだろうか」と指摘し、観光省が打ち出すキャンペーンの内容に疑問を呈する。
観光省は、中国人に対し、例えば、タイ国内にいる「同姓」を訪ねる旅をプロモーションしたり、国内の旅行者数を増やし、観光セクターを盛り上げるために、「100バーツのタイ観光」を打ち出したりしている。社説は、こうした戦略を打ち出す観光省に対し、「真の問題に気づいておらず、観光地としてのタイの評判を傷つけかねない」と、批判する。
「こうした政策は、観光産業にとって、いわば“腐ったリンゴ”だと言える」「単に観光客数や観光収入といった量を増やすことだけを目的とした政策であり、観光の質を高める政策ではない」